医療・福祉問題研究会会報NO.75
2006.2.1
第80回研究例会のご案内
日時: 2005年2月18日(土)15〜18時
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館 4階学習室
報告: 『医療制度改革について』
講師: 工藤浩司 氏(保険医協会) 

 2005年12月、政府・与党は「医療制度改革大綱」を決定し、今年度の通常国会に医療制度改革関連法案を上程する予定です。今回の研究例会では、この法案の具体的な内容(患者負担増、保険者の都道府県単位の統合、混合診療解禁、高齢者医療保険制度など)について、論点整理をした上で、「誰もが必要な医療が必要なだけ提供される」という、医療保険として「当たり前の」保障が行われるものなのか、参加される皆さんとともに検討したいと考えています。
 
なお、今年の4月からは、診療報酬・介護報酬が同時に改定されます。この内容は、今後の医療制度改革にも密接に関わってくる(あるいは先取りしている)ので、最新の情報を併せて検討したいと考えています。
※ 研究例会に先立ち、同日の13時から例会会場にて、医療・福祉問題研究会の世話人会を行ないます。ご都合のつく方は、ご出席お願いします。


第79回例会報告
ハンセン病の現状と課題
会津大学短期大学部 久保美由紀

12月23日の例会では、ハンセン病問題の現状と課題をテーマとし、北谷真理氏、井上英夫氏のお二人からそれぞれ報告していただきました。
北谷氏からは『元ハンセン病患者 故浅井あいさんと関わりから…学んだこと』と題して、ご自身が小学校教諭として担当されていたクラスの子どもたちと共に、浅井あいさんはじめ、栗生楽泉園で生活する方々等と関わりのなかでの気づいたこと、学んだことなどを中心に報告していただきました。
例会当日に準備していただいた資料などもみていきますと、北谷氏がハンセン病について、また、浅井あいさんたちと深く関わるようになったきっかけは、小学校での「保健」の授業だったそうです。このことをきっかけに、授業の枠を超え子どもたちと手紙を出す、訪問するなどの行動を通して関わりを深めるなかで、子どもたちが学び、成長していった様子を報告していただきました。その一方で、あいさんの写真を初めてみた子どもたちが「思ったほどの驚きを示」さなかったこと、「普通のおばあさんやね」という一言を聞いたことなど、子どもたちから北谷氏自身が一個人として気づき、学ぶことができたとのことでした。最後には「自分(I)」と「あなた(You)」という言葉を使いながら、人と人とが認め合い、また共有できることが人権を尊重することであり、そのことを教育現場の中でどのように伝えていくかというご自身の今後の課題についても話していただきました。
井上氏からは、『ハンセン病問題の現状と課題−民主主義と人権の観点から−』と題して話をしていただきました。まず話していただいたのは、北谷氏の報告にあった人権保障には「自分(I)」と「あなた(You)」という個人間の関係による人権尊重が大切であるということだけではなく、人権保障の主体としての「公(国家)」と個人との関係の重要であるということでした。日本のハンセン病問題の背景には、個人間の差別を国が政策として作り出し、助長したという、まさに国が人権保障の主体としての責任を果たしていなかったことがあり、そのことは日本の民主主義が欠落していたことによるものではないかということです。
民主主義の基本には国民主権ということ、ハンセン病では患者主権ということがなければならない。熊本地裁判決や検証会議の成果として、日本型政策に対する国家責任は認められたものの再発防止のためには、根深い問題を抱えながらも本当の意味での民主主義が成り立つことが必要であること、そして教育、法律、医療、社会福祉等のさまざまな分野のなかで人権侵害の担い手から保障の担い手へとの転換を進めていくことについて話していただきました。
私が初めて栗生楽泉園を訪ねたこと、自治会長の藤田さんにお会いし、いろいろな話を聞かせていただいたこと、そしてその滞在時に浅井あいさんが亡くなられたことなどを思い出しながら今回のお二人の話を聞かせていただきました。また自分自身が出会った人たち、また出来事についてどれだけその意味を理解し、動くことができただろうかと、何もしていなかった自分に大きな課題を突きつけられたようにも思いました。言葉や現象だけを見るのではなく、本当の意味での民主主義、人権保障とは…本当に重い課題をいただいた気分です。

 金沢では昨年12月から大雪に見舞われ、連日の厳しい寒さの中で、会員の皆様の多くも、春を待ち遠しく感じていることと思います。
会報担当では、読みやすくそして速やかな会報発行を、本年も努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

2005年12月23日 第79回研究例会のあと、年末恒例となった医療・福祉問題研究会大忘年会が行なわれました。近況報告や来年の抱負などを語り合い、会員同士大いに交流ができましたのではないでしょうか。
以下、研究例会の様子、忘年会での一場面を少しご紹介します。