医療・福祉問題研究会会報NO.77
2006.6.24
医療・福祉問題研究会 総会記念企画
日時: 7月15日(土)午後1時半〜4時
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館 4階集会室
講演: 「スウェーデンにおける利用者主体の社会福祉法制度
〜その歴史的展開と理念〜」
高田 清恵さん(琉球大学法文学部) 
2003年9月から約2年間、スウェーデンのエステルスンドという寒い地方にあるミッド・スウェーデン大学において、社会保障法とりわけ社会福祉法制における住民参加をテーマに研究する機会を与えていただきました。
 スウェーデンでは、社会福祉に関する包括的な法として、「社会サービス法」という法律があります。これは児童、高齢者、障害をもつ人などに対する社会福祉の各分野と、生活保護も含む包括的な社会福祉に関する法律で、1980年に制定されたものです。
 社会サービス法は、日本の「措置制度」と同じく、行政処分にもとづくサービスの提供方式をとっていますが、同時に、利用者の自己決定権と尊厳を尊重することが基本原則として定められています。自分の受ける社会福祉の内容や自分自身の生活については、できるかぎり本人の自己決定権と選択の自由に基づいて形成・実施されるべきであり、本人の影響力がおよぶべきであるとされています。そして、このような原則を実現するために、社会サービス法の中だけでなく、行政法や地方自治法等も含めて、様々な法制度が整備され、改善されてきていることを知りました。
 今回は、このようなスウェーデンの社会福祉法制において重視されてきた「当事者民主主義」の一端についてお話させて頂きます。スウェーデンの例を一つの手がかりとして、今後、日本において、真の意味での利用者主体の社会保障・社会福祉を実現していくためにはどうしたら良いのか、どのように法制度を改善していったら良いのか、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。


総会記念企画 報告

医療・福祉問題研究会 総会のご案内  

日時: 7月9日(土)午前11〜12時 
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館 4階集会室
? 2005年度の活動報告と2006年度の活動計画案
   ? 2005年度の決算報告と2006年度の予算案   など

※参加者にはお弁当をご用意しています。参加される方は、末尾の申込用紙でFAXにて、又はメールにて事務局までご連絡をお願いします。(7月12日〆切)


第81回例会報告
「生活保護の実態と課題」
城北病院 MSW川合優

 2006年4月15日、「生活保護の実態と課題」をテーマに、加賀市議会議員の新後由紀子氏と金沢あすなろ会の三井美千子氏に報告していただいた。
 新後氏からは「加賀市の生活保護行政の実態」についての報告があった。加賀市ではバブル崩壊後の平成5年頃から、中心産業である温泉観光が急速に低迷した。山代・片山津温泉宿泊施設もピーク時の昭和51年には72あった施設数も、平成17年には35施設と半分以下となっている。相次ぐ温泉宿泊施設の閉鎖が加賀市の生活保護行政にも大きな影響を与えている。平成5年から平成16年にかけて、生活保護被保護世帯が117世帯から520世帯へと、約4,5倍に増加し、保護率で見ても、平成16年の石川県の保護率が4,31‰に対し、加賀市では9,65‰と非常に高い数字となっている。温泉施設の閉鎖により解雇された従業員は、年金・社会保険もなく、失業と同時に生活保護に頼るしかないケースが多い。さらに、サラ金業者に多額の借金をしている人も少なくない。
 また、温泉旅館で働く従業員の雇用問題についても報告があった。加賀温泉では接待さんに給与制度をとっているところは少なく、一日の総売上総額の何パーセントかが接待の持分として配分される奉仕料の仕組みをとっているところが多い。一日9時間から10時間働いても、2000円、3000円にしかならない日もあり、土、日、祭日を休むと罰金5000円から10000円を支払わないといけないなど、労働条件は決して良くない。さらに、旅行会社やお客からのクレームにより解雇になることもある。
 生活保護世帯の増加に伴い、加賀市では担当職員も増員しているが、生活保護申請前に相談が優先されたり、就労支援が強化されたりと、機械的な対応になっているのが現状ということである。こういった状況をうけて、現在、これまでばらばらであった人々が、「生活と健康を守る会」として集まり、当局との要望交渉や市民の活動を始めている。
 次に、金沢あすなろ会の三井氏からは「多重債務と生活保護の現状」についての報告をうけた。小泉内閣の元で推し進められる、税制改革、社会保障改悪に加え、雇用の悪化や収入の減少と、国民を取り巻く環境は大きく変化しつつあり、そういった状況の中で、クレジット・サラ金による多重債務者の被害は増大し、破産申立件数は平成16年度で211402件と、3年連続21万件を超えている。生活が苦しい中で、サラ金から一度借り入れをすると、高金利の支払いを余儀なくされ、結局は借りては返すという自転車操業になってしまうことが多い。サラ金業者は29.2%という高金利で貸付し、支払いが滞ると、過剰な取立てをおこなう。債務者は過剰な取立てを恐れ、返済するために、別のサラ金会社から新たな借り入れを繰り返し、多重債務への道を歩み、破産や自殺へと追い込まれていく。自己破産件数の増加に伴い、自殺者数も年々増加し、平成16年では年間7947人となっている。
 今日の多重債務の激増は、失業、労働環境の変化、社会保障の貧困さなど、日本社会・経済・金融の構造上、必然的に発生しているといえる。
 景気回復傾向といわれる日本において、今回二人が報告していただいた、生活保護受給者や多重債務者の激増は、日本の格差社会を露呈しているように感じた。今後も国民の負担が益々増加し、生活保護受給者や多重債務者が増え続けると予想される。そういった実態を正確に把握し、行政側に訴え、運用改善の要望をしていくことも大切であると感じた。


↓総会参加者にはお弁当をご用意しますので、事務局までご連絡をお願いします
7月12日〆切


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