医療・福祉問題研究会会報NO.79
2006.12.10
第84回研究例会のご案内
日時: 2006年12月23日(土)115〜17時半
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館
報告:『どうなる療養病床? 療養場所をさまよう患者たち
      〜 在宅と転院の試みから見えてきたもの〜 』
信耕 久美子さん(城北病院 医療ソーシャルワーカー)
伍賀 道子さん (金沢リハビリテーション病院 医療ソーシャルワーカー)

 今年春に行われた診療報酬の改定、そして医療関連法の改悪により、医療の中でも療養病床をめぐる動きは、目まぐるしく変容してきています。
厚生労働省は、全国でも23万床の医療・介護療養病床の削減をねらい、この7月からは医療療養病床において、患者の医療必要度別に診療報酬を改定しました。そのために、診療報酬が低く設定された医療必要度の低い患者に関しては、全国的にも施設や在宅への退院を強いられるなどの動きも報告されています。
そして、5ヶ月が経過した今、実際の療養病床をもつ現場はどのように変わってきたのか、そして患者に与える影響はどうなのか・・・。今回、療養病床再編問題を取り上げる中で、医療必要度が高い患者を在宅生活に戻す取り組みを行った事例、そして、この療養病床転換の狭間に立つ中で、新たな施設転換を見出すことを機に見えてきた療養病床の現状など、現場のレポートを中心にして、療養病床の再編問題を取り上げていくことにしました。
今年最後の例会です。多数のご参加をお待ちしています。


※ 例会前の午後1時〜2時半まで、同じ会場にて事務局会議を行います。
例会終了後、毎年恒例の大忘年会を企画しています。別紙の案内をご覧の上、参加のご連絡をお願いします。

第83回例会報告
「障害者自立支援法がスタートした今―それでもしたたかに」
石川県保険医協会 小野栄子

10月14日、白山市市民交流センターにおいて「障害者自立支援法がスタートした今―それでもしたたかに」と題した講演会が開催された。秋元波留夫講演会実行委員会ときょうされん石川支部設立準備会が主催し、医療・福祉問題研究会も後援団体として実行委員会に加わった。講師は、金沢大学名誉教授で「きょうされん」顧問の秋元波留夫氏と「きょうされん」常務理事の藤井克徳氏であった。
秋元氏の講演は「憲法9条―戦前の軍国主義国家体制への後戻りを許すな―」というテーマで行われる予定だったが、直前に秋元氏が体調をくずされたため、準備されていた講演要旨の代読という形となった。藤井氏は「障害者自立支援法の施行実態と問題点・課題―施行後の半年間でみえてきたもの、求められる『運動と対応』」というテーマで講演された。以下、藤井氏の講演を要約する。
2005年10月31日は歴史の歯車が逆回転した、忘れられぬ日となった。障害者自立支援法が成立し、応能負担から応益負担へと代わったことで、障害が本人と家族のせいにされたのである。自立支援法の施行以降、「将来、生きていく自信がない」と障害のある親子の心中事件が前年に比べ増加した。さらに影響は当事者だけにとどまらない。人員配置基準の後退、日額払い方式、利用料の滞納やサービスからの離脱等により、事業者に対する打撃も深刻である。このように利用者と事業者の対立の構図がつくられ始めている。この状況を打破するためには利用者と事業者による協同の運動が求められている。
自立支援法の成立過程を振り返ると、2004年1月8日に介護保険制度との統合方針が発表されたことに端を発し、2005年2月10日はグランドデザインと新たな利用者負担を中核とした法案が決定した。2005年8月8日にはいったん廃案となったが、結局2005年10月31日には再提出されて可決成立、十分な準備期間のないままに2006年4月1日から部分的施行、10月1日からは完全施行と一気に進んだ。それでも厚生労働省が描いたとおりにことが運ばなかったという意味で、法案が一度廃案となった意味は大きい。郵政民営化廃案による解散だけが廃案の要因ではない。障害のある当事者や関係団体による慎重審議を求める運動の高まりが廃案の大きな要因となったのである。
運動の成果を正確に評価した上で、今後は障害者自立支援法が積み残した課題、つまり、利用者負担問題、各種事業の運営費基準、障害の認定方法、精神障害関連の施策、扶養義務制度・家族制度等の根本的な問題を、政争の道具ではなく人権問題として、もう一度議論しなければならない。また、利用者と事業者は、自立支援法の「公費抑制装置」を見抜いた上で、「それでもしたたかに」生きていこう!藤井氏は以上のように語り、講演を締めくくった。
幸いなことに、この問題に対するマスコミの反応は良い。NHKの「クローズアップ現代」をはじめとして、雑誌等でも自立支援法の問題点をつく特集が組まれている。地元の動きでは、10月16日からの3日間、石川県保険医協会や石川県社会保障推進協議会等が主催した「医療・福祉・介護119番」には県内のマスコミ各社が取材に訪れ、障害のある人の施策課題等を熱心に質問していく姿が目立った。また、金沢市の福祉タクシー制度の復活を求める該当署名運動にも、毎回マスコミが取材に訪れている。自立支援法の実施に加えて各自治体の施策はますます厳しくなっているが、自立支援法の見直しに向けて再度大きな機運を高めていければと願う。
そして最後になったが、秋元先生の1日も早いご回復を心からお祈りしている。

20周年記念講演報告
「13歳少年から始まった応益負担反対の取り組み
−障害のある人の社会保障と障害者自立支援法−」
金沢大学大学院人間社会環境研究科 井口克郎

2006年11月4日、障害者自立支援法の応益負担反対の取り組みについて、愛媛県松山市から前田俊彰さん(松山市立道後中2年)、前田優子さん(愛媛県の障害児の親の会代表)、鈴木靜さん(愛媛大学法文学部)のお三方にお越しいただき、報告をしていただきました。お三方は障害者自立支援法案の応益負担反対署名を5400筆集め、2005年10月に国会へ請願書を提出、国政に影響を与えました。
はじめに前田俊彰さんから署名を集めたきっかけから署名活動、国会に請願書を届けに行った様子について報告がありました。クイズを交えたユニークな報告で、成績最優秀のグループには賞品の松山銘菓「しょうゆ餅」が贈られました。
続いて俊彰さんの母の前田優子さんは、これまで障害のある子の教育充実のための親の会の活動を通じて、全国初の「生活支援員」制度を松山市教育委員会に創設し、成果を挙げてこられたことや、障害者自立支援法成立後、同法改正へ向け行っている勉強会や運動の状況について報告されました。2006年3月には厚生労働省へ交渉・要望書提出、また松山市と市議会へ陳情書を提出しました。また、10月には松山市に利用料の減免措置等を盛り込んだ請願書を提出し、これは11月2日の市議会で採択されました。このように、勉強や愚痴を言い合うだけの会で終わるのではなく、実際に行政に対して行動を起こすということを重視し、この6年間地道に松山市に交渉を続けてきた結果、要望はほぼ実現してきています。
そして最後に鈴木さんは、障害者自立支援法を考える視点として何点か提起されました。まず、障害のある人の生活について、どのような生活水準を保障するのかという点です。「最低生活」ではなく「同年代の市民と同じ水準の生活」を保障し、その上で人生のパートナーとして利用者の自己決定を支えるソーシャルワーカーの必要性を指摘しました。次に自己負担の意味については、デンマークの社会サービス法における利用者自己負担が、利用者の自己決定や選択の自由を実質化するためのものであるのに対し、自立支援法の自己負担はサービスを抑制して強いられた自己決定につながっているとし、同法の応益負担のあり方を批判しました。そして、まずは障害者自立支援法の特に応益負担を凍結すること、そして今後利用者の権利保障の視点に立った「構造改革」を行う必要性を提起しました。
報告後、会場からの「一生懸命署名を集めて届けたのに法律が通ってしまったことについてどう思われますか」という質問に対する、前田俊彰さんの「残念です。大人ってそんなんなんかなぁ、国がこれじゃ日本はもうだめだ」という一言からは、わが国の当事者不在、国民不在の政治をあらためて実感させられました。しかし、前田優子さんの報告にもありましたように、地道な活動を続け行政に交渉を続けてきた結果、成果が現れてきているという現実があります。
「地方から日本を変える」というスローガンのもとに、更なる取り組みに向けて思いを確認しあった「研究会20周年記念」にふさわしい講演でありました。


 医療・福祉問題研究会 2006年大忘年会のご案内

毎年恒例の医療・福祉問題研究会の忘年会を企画しました。年末の忙しい時期ですが、今年一年を振り返り、会員の皆様方と大いに語り合えるひと時を送ることができればと思います。多数の御参加をお待ちしています。

日時:12月23日(土)18時〜(例会終了後 移動)
場所: ニューグランドアネックス2階「ポロ」
       (ニューグランドホテル隣接別館)
          TEL 076-233-7000
予算: 5000円

準備の都合がありますので、12月20日(水)までに出欠をお知らせ下さい。
Faxご利用の方は、以下の用紙をご使用ください。
E-mail: eiko960@yahoo.co.jp (小野)
    FAX : 076−252−7775 (河野)



医療・福祉問題研究会大忘年会 申し込み用紙

医療・福祉問題研究会 2006年大忘年会に

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