医療・福祉問題研究会会報NO.80
2007.2.7
第85回研究例会のご案内
日時: 2007年2月24日(土)114〜16時半
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館
報告:『どこへいく生活保護制度
     〜生活保護をめぐる現状と課題〜』
一部 北九州市生活保護問題現地実態調査に参加して
報告者  城北病院 MSW 信耕さん
       金沢大学 井上ゼミ 伊深さん
二部 金沢市における生活保護の実態
報告者  あすなろ会  榊さん

2006年5月23日、北九州市門司区の市営住宅で56歳男性がミイラ化した遺体で発見された。前年9月14日にすべてのライフラインが止められたうえ、本人からの二度にわたる生活保護申請は受付すらされなかった。

何故、こういう生活保護行政がありえたのか。この事実が明らかになっても、なお生活保護行政の責任が問われない仕組みはどこから来るのか。
実態を明らかにするために2006年10月22〜25日に生活保護問題現地実態調査が行われた。調査には、金沢大学の井上英夫先生が団長として参加し、ほかに石川から2名が参加した。この調査団の報告とともに、石川で実際どういうことが起こっているのか現場からの報告も加えて、皆さんで生活保護制度について検討したい。


第84回研究例会報告
『どうなる療養病床? 療養場所をさまよう患者たち
〜 在宅と転院の試みから見えてきたもの〜 』
城北病院 MSW川合優

2006年12月23日、『どうなる療養病床? 療養場所をさまよう患者たち 〜在宅と転院の試みから見えてきたもの〜 』をテーマに城北病院MSWの信耕氏と金沢リハビリテーション病院のMSW伍賀氏のお二人からの報告があった。医療関係者や学生など、会場は50名以上の参加者で一杯であり、椅子が足りなくなる程の大盛況でした。
 まず、信耕氏から政府が推し進める、「医療制度改革大綱」をもとに療養病床の位置づけについての話しがあった。医療費適正化という名のもとに、長期入院の是正や診療報酬の見直し、病床転換が実施されてきている。療養病床については、現在ある療養病床38万床(医療療養病床25万床、介護療養病床13万床)を、2012年度までに15万床(医療療養病床のみ)に削減することが決まっている。そのため、現在、療養病床をもつ病院は病床廃止や病床転換をせざるをえず、混乱している状態である。また、2006年4月の診療報酬改定や、リハビリの日数制限により病院の収入が減少し、現場では人件費削減が人員不足をまねいている。では、診療報酬上、医療・介護の必要度が低いと判断される患者様は本当に政府の言う社会的入院であるかを検証するために、信耕氏は実際に療養病床に入院されている患者様をモデルに、退院して在宅で介護保険を利用し生活した場合の利用料について算出した。その結果、なんと一ヶ月約37万円もの利用がかかることもありうることが判明した。これにより、療養病床に替わる居宅サービスがあまりにも貧弱であることが浮き彫りとなった。
 次に、今回の療養病床の転換期において、実際に2007年2月より、病院から有料老人ホームに転換する金沢リハビリテーション病院の伍賀氏より、施設転換に伴う退院調整に関わる中で見えてきた様々な課題や、療養病床の現状について報告があった。金沢リハビリテーション病院で退院調整の対象となった76名の今後の療養先については、半数以上の40名は他病院の療養病床か老人保健施設への転院となる予定であることがわかった。その理由としては、有料老人ホームでは利用料が高額で支払えないといった経済的な課題や、医療管理が必要で療養病床でしかみられないような病状的な課題などがあげられる。また、老々介護をしている夫・妻が通える病院・施設が近くに無かったり、どこの施設も一杯で、なかなか入所できないないなど、転院・退院調整もうまく進まないのが現状のようである。
 お二人の発言のあと、参加者との意見交換の中で、「療養病床の廃止で、現場で混乱が起こっていることはわかったが、では、本当に療養病床が適切な施設として日本に必要なのかを議論する必要があるのではなないか?」という意見も出された。
 今回の例会に参加して、政府の進める医療改革の矛盾点が明らかになったように感じた。病床削減を補うはずの在宅サービスの整備が進んでおらず、その狭間でさまよう多くの患者が今後も増え続けることが予想される。今後の政府の動きを注意してみていく必要があるし、本当にあるべき医療・福祉の姿を議論していく必要性があることも改めて感じた。


私のひとこと、私もひとこと
「改正」教育基本法に危惧感
                ピアカウンセラー 道見 藤治

 私は一介のオジサンである(団塊の世代よりやや若い)。そんな私ですら、この度の教育基本法の改悪に危惧感を覚えるので筆を取らせていただく。どうか若い人にオジサンの発信をキャッチ願いたい。
 そもそも明治時代、日本が近代国家の道を歩むとき、教育においての大計は、渡英しその後アメリカに渡りコロニーに参加して大きな影響をうけた初代文部大臣森有礼(もり ありのり)の民主教育にあった。しかし森は国粋主義者に暗殺され、替わって「富国強兵」を進める勢力が台頭し、日本は戦争をする国として歩んできた。
 第二次世界大戦で日本が敗れ、教育においても大きな猛省があった。戦後の民主教育のスタートである。そのときの子どもの親たちは戦中派と呼ばれる世代であり、そこから感じとった戦争反対の心は根強いものがあった。戦争の悲惨さを赤裸々に象徴するものとして、募金活動をする傷痍軍人の姿があった。私には直視できないほどの恐怖心があった。
 そういうことで私の世代は戦争を体験したわけではないが、戦争は嫌だという思いはある。だが一方で、戦争の実体験のない戦無派と呼ばれる世代以降は戦争を肯定する人も生まれてきている。
 話を教育に戻すと、私は一つの結論を出した。それは「感性を統制してはならない」ということである。なぜなら人間がもつ素直な気持ちが自浄作用を有しながら歴史の発展につなげられる。ところが、この感性を統制すると何でも平気で誰かに言われるままに行動する人をこしらえることになる。
 「改正」教育基本法において、愛国心、公共の精神という言葉が導入された。これは子どもの心に介入する大きな問題である。いつか来た道を再び歩む危険性をはらんでいると言える。心の熟成は一人一人が、丹念に見聞き、体験を通じて行なわなければいけない。また是、非を自分の判断でできる人を育てなければならない。
 さて心の問題に迫ってみる。手前ミソであるが「伝統文化」として能楽を提唱してみたい。能の「精神世界」は敗者、不遇な立場の人の心を題材にしたものが圧倒的に多く、歴史の裏側に光を当てしっとり聞かせるものが多いのである。勿論、能の長所短所はあるので、人それぞれの見方、是々非々で対処願いたい。

新年にあたって 若手会員からのひとこと

加藤 賀代子 さん(社会保険労務士)
一昨年の忘年会の時、妊娠7ヶ月だった私は「小さい頃からお母さんになるのが夢だった」と言いました。お陰様で昨年4月1日に、無事娘が生まれ、念願のお母さんになることができました。
今後の大きな目標は「やりたいことに向かって努力しているお母さん」です。具体的には医療ソーシャルワーカーとしての経験を活かして社会保険労務士という新たな世界に1歩踏み出したいと思います。事業主のためだけでなく、そこで働く人たちとっても「働きやすく、成長していける」ような人事労務管理と、「その人らしい人生」を送ることができるような年金制度の活用に関わる仕事をしていくのが今の目標です。

萩沢 友一さん(小矢部市社会福祉協議会)
昨年11月に新規入会しました。皆様よろしくお願いいたします。
 小矢部市社会福祉協議会にて勤務し、市民の方々と共に地域福祉事業やボランティア活動支援などを行っています。地区社協やボランティア関係者の方々は皆温かく、いきいきとしておられます。また、組織化支援業務で関わっている視覚障害者の方からは公私共々について励まされ、心に響く言葉を多くいただいています。
このような方々に毎日支えられ、成長させていただいていることに感謝しています。
 ご存じのとおり、近ごろ、国や自治体の財政悪化に伴い、福祉や医療などの各法制度が脆弱化する一方、地域の人と人とのつながりが希薄化しており市民生活に多くの課題が噴出しています。また、社協の経営についても影響を受け、その正常化が求められています。
地域における福祉課題解決のため様々なプログラムやプロジェクトを立案し、実施していますが、結局のところ、その解決を図ることができる要件、および福祉課題を発生させないようにする要件は、「お互いさまの心」なのだと思います。人々がこのお互いさまの心を忘れると、社会にひずみが生ずるのだろうと思います。その「お互い」とは、人と人との間のことだけを指すのではなく、人と自然の間においても成立する必要があります。福祉関係者は、なにかと人のみに注目しがちですが自然環境との関係性を忘れてはいけません。
地域福祉は、このようなお互いさまの心を内在化し周囲に広めていくことであろうと思います。そのためには、地域福祉に携わるものにとって豊かな感性と洞察力、冷静な頭脳が要求されてきます。
そのような条件を備えた、地域に頼られる地域福祉の担い手になりたいものです。

井奈 由香さん(城北病院 医療ソーシャルワーカー)
今年は、日本は去年よりよい社会になり、よい一年を迎えられると思います。また、日本だけでなく、この世の中全体が去年よりずっと良い一年になると思います。人間は、生きているのですから、学びを生かすべきです。
では、わたしは?そのためには、何ができるでしょうか?一つは、毎日命あることに感謝し、一生懸命生きることでしょう。一つは、毎日仕事をすることできることに感謝し、勤めることでしょう。また、一つに、すべてのことにおいて、"おかしい"と思うことをおかしいと声に出し、正しいと主張することでしょう。
いろんなかたちで、自分がこれまで社会からが受けた恩恵に感謝し、それを還元していく必要があるのだと思います。
私は、「医療・福祉問題研究会」という存在自体が社会に大きな還元をしていると感じています。今年も、いろんな意味で自分自身にとって"糧"となるように取組んでいきたいと考えています。今年の抱負は(毎年、職場では一人一人の抱負を掲げています。)いろんな意味で『自分に負けない!!!』です。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

・・・今後の会議、例会のご案内です。
予定の上、ぜひご参加ください・・・
           
次回事務局会議
  
日時:3月9日(金) 午後6時30分〜
  場所:松ヶ枝福祉館

第86回研究例会
   
日時:5月12日(土)午後2時〜4時30分
   場所:松ヶ枝福祉館
   テーマ:地域包括支援センターの現状と課題(仮)
   報告者:寺本紀子さんなど