医療・福祉問題研究会会報no.82
医療・福祉問題研究会 2007年度総会記念企画
日時: 7月28日(土)15時〜17時半
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館 
『小川政亮先生から学ぶ人権としての社会保障
―歴史と展望−』
第一部 若手会員による小川先生へのインタビュー
   小川先生からご挨拶をいただいた後、3人の若手会員が研究会を代表して小川先生へインタビューを行い、質疑応答の形式で小川先生の理論と思想を学びます。

第二部 いまこそ人権としての社会保障の確立を
―小川政亮著作集刊行にあたって―
   今年10月に刊行される『小川政亮著作集』(全8巻)の刊行実行委員会委員長である井上英夫金沢大学教授から、著作集刊行の意義と人権としての社会保障の確立に向けた私たちの課題について語っていただきます。
医療・福祉問題研究会 総会のご案内 
総会記念企画に先立ち、2007年度医療・福祉問題研究会の総会を下記のとおり開催いたします。ご出席のほど、よろしくお願いいたします。
日時: 7月28日(土)13時〜14時半 
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館 
? 2006年度の活動報告と2007年度の活動計画案
   ? 2006年度の決算報告と2007年度の予算案   など
第86回研究例会報告
「地域包括支援センターができて1年 
〜地域包括支援センター職員によるリレートーク〜」
小矢部市社会福祉協議会 萩沢友一
「地域包括ケア」の実施機関として、実際はどのように機能しているかという視点でリレートークが展開されました。
 始めに、寺本紀子氏(津幡町地域包括支援センター)より包括支援センター(以下、センター)の概要について説明をいただきました。センターは、地域ケアの拠点として位置づけられ、総合性・包括性・継続性の3点が運営の原則である。設置数は全国で約3,400強、1,690の保険者での設置率は87,8%、36%が市町村直営型、64%が委託型となっている。
 運営の課題として居宅介護支援事業所より、介護予防プランの様式が煩雑、単価が低い、各センター機能の質に格差がありすぎる等の不満。センター現場職員からは、過多な業務に疲弊している等。市町村の問題意識として委託料引き上げは困難、各センター力量や質の格差、特定高齢者が挙がらないなどがあるとされた。
 次に各発表者から、センター稼働開始以降の変化や意義について報告があった。杉本敦子氏(志賀町地域包括支援センターサブセンター有縁)からは、当該区域の在介センターからそのまま包括に赴任したため、在介勤務時代から把握していた対象者が要援護者となった際、円滑にサービス提供やネットワーク(以下、ネット)づくりができた。中恵美氏(お年寄り地域福祉支援センターとびうめ)からは、虐待問題ケースを挙げ、要介護者本人にサービス提供できただけでなく虐待の加害者にも医療的サービスの必要性を把握し、提供できた。更に、要介護者本人側の支援者ネットと加害者側の支援者ネットの合同カンファレンスを実現できた。また、高齢者分野以外の相談も受け付けることができることも意義の一つ。橋爪真奈美氏(お年寄り地域福祉支援センターみつくちしんまち)からは、県営住宅を公社が管理していた頃はそこのニーズ把握は困難であったが、包括型ができた頃に住宅の管理が民間に委託された結果、その民間会社に住宅の住民がニーズを訴えるようになりその相談をセンターが受けるといった流れができた。また、職員体制が社会福祉士、保健師、ケアマネと介護保険施行前のように戻り医療専門職が加わったことが力強い。だが、予防プランの件数が多すぎる。武田智美氏(お年寄り地域福祉支援センターかみあらや)からは、認知症の方のケースを挙げ、各専門機関だけでなく住民や家族、友人等のインフォーマルな人々をネット化することができた。また、センターに社会福祉士が配置されたことが大きい。東出洋幸氏(能美市高齢者支援センター)からは、虐待問題に対応する機関として位置づけられた結果、虐待ケースを扱う機会が増え地域のネットづくりを色濃く行うことができた。また、高齢者だけでなく、多様な相談者をワンストップな形で対応できる体制を築くことや社会福祉士の役割の明確化、虐待問題対応のネットづくりが課題である。
 その他、介護予防事業をセンター業務からはずし、独立させたほうが良い。介護予防を考える地域ネットづくりが必要。法律の知識がある社会福祉士と医療的知識や経験のある保健師が組めばより良い支援を行うことができるといった議論があった。
能登地震調査報告
能登地震調査に参加して〜住民のニーズにあった復興の提案を〜
金沢大学大学院人間社会環境研究科  村田隆史
地震直後は多くのマスコミが能登半島地震のことを伝えていたが、今ではマスコミが伝えることも減りつつあり、あるとしても被災の痕を伝えるよりも復興の様子である。しかし、調査に行った6月9・10日の段階でも、復興が進む中でも、地震の傷跡がはっきりと残っていた。被災者の方が「神戸は人が大勢死んだけど、今回は1人だったからもう全国の人は忘れている」とおっしゃっていたが、様々な理由で今でも地震で苦しんでいることを忘れてはいけないと心に誓うと同時に地震当日に家族の無事が確認できて安心していた自分の気持ちを反省した。
多くの被災者の方の話を聞くことができたが、当日の話や避難所での生活などを聞くと、本当に心が痛んだ。同時に今も辛い状況でありながら地震発生から調査当日までのことを明るくなおかつ鮮明に話してくださった方々には感謝してもしきれない。医療・福祉問題研究会としても長期的に携わっていくことになるが、協力してくださる人のためにも出来る限り参加し、無い知恵を振り絞って微力ながらも復興の提案を行政や政治、石川県民、日本国民にしていきたいと思う。自分が話を聞いた人の多くが「今の生活には満足している・不満は無い」と言っていたが、これをどう評価するべきだろうか。本当に心から満足しているのか?それとも元々住んでいた家にはもう戻れない、建て直す事はできないという不安から今の生活でも現状を受け入れようとしているのか?おそらく答えは後者であると思うが、この一つの疑問を解決するにも今の自分ではそれを判断できる材料を持ち合わせていない。ハード面での復興の提案をしていく時にも、それは住民のニーズにあったものでなくていけない。それは今後の課題としていきたい。
今回の調査は1泊2日と短期間であったが、本当に貴重な経験になった。学部時代に早川町の全口調査をしたが、やはり本で読む早川町と実際に行く早川町が大きく異なっていたことを思い出し、今回は現場に行くことの大切さを再認識させられる調査だった。貴重な機会を下さった医療・福祉問題研究会のメンバーをはじめ、調査に協力してくださった皆様本当に有難うございました。
 今後の予定について 《お知らせ》
 第2回石川県社会保障学校
   日時: 9月22日(土) 10:00〜16:00
   場所: 生涯学習センター (予定)
   メーンテーマ  人権が息づく街づくり
     記念講演  布川日佐史先生(静岡大学)