医療・福祉問題研究会会報
NO.89
2008.11.18
第93回研究例会のご案内
日時 : 2008年12月20日(土)15時〜17時半
会場 : 金沢市松ヶ枝福祉館 4階集会室
テーマ:『公的年金制度と社会保険庁改革の問題点について』
報告者: 密田逸郎氏(立命館大学大学院社会学研究科研究生)
いわゆる「消えた年金」問題に端を発した、社会保険庁の公的年金記録管理のずさんさと職員の不正が大きく取り上げられ、国民の間に「年金をいくら受け取ることができるのか」「積み立てた年金保険料はどうなっているのか」に加え、「年金そのものを受け取ることができるのか」という3つの不安が広がっています。
この「消えた年金」問題に託けたように「社会保険庁改革」が行われ、厚生労働大臣の管理・監督の下、公務員でない職員によって構成される「日本年金機構」が設置されようとしていますが、この「改革」によって公的年金問題は解決できるのでしょうか。今回発覚した公的年金記録管理問題を中心とした公的年金の問題点と社会保険庁改革の問題点を、長年公的年金問題を研究されている密田氏に報告していただき、質問や意見交換を交え、公的年金管理を中心に、日本の公的年金のあり方について議論を深めていきたいと思います。
多数のご参加をお待ちしております。

※ 当日、例会に先立ち13時から集会室にて事務局会議を開催します。
ご都合のつく方は、あわせてご参加ください。
第92回例会報告

「タクシー労働者との関わりのなかで見えてきたこと」
小野栄子
去る9月26日、松ヶ枝福祉館にて、標記の研究例会が行われた。今回の報告者である、城北病院健康支援センターの保健師広田美代さんは、あるタクシー会社の健康診断を受けもったことがきっかけで、労働・生活実態に興味をいだくようになった。50代半ばにして独身・寮暮らし。心筋梗塞を起こし孤独死をしたタクシー労働者もいた。タクシー労働者の健康状態、労働実態は一体どうなっているのか・・・。実態を把握するため、広田さんは寮を訪問して健康相談を行うようになった。そこで顕在化してきた過酷な労働実態、健康状態等の問題を今回ご報告いただいた。
52歳で寮住まいの男性。夜勤専門の正社員だが、休日にアルバイトしても手取りは34,000円しかない。職を転々として行き着いたのがタクシー乗務だった。このような事例を紹介した上で広田さんは、タクシー労働者が置かれている問題とその社会的背景について考察した。
 マイカーの増加で客は減る一方なのに対し、2002年の規制緩和以降、東京ではおよそ4千台のタクシーが増え、市場競争が激化した。金沢も例外ではない。2001年には金沢市内で1,566台だったのが2007年には1,839台に。タクシー過剰のなか、運賃賃下げ競争と事業の疲弊により、事故の増加、質の低下と同時に、乗務員の労働条件が悪化している。広田さんは、実際の勤務表を紹介しながら、営業収益に直結する「歩合制」で、あまりにも低すぎる賃金実態を指摘。さらに乗務員は不規則勤務と長時間座り続けることによる健康悪化、客とのトラブルによるストレス、経済的不安をかかえていることを紹介。石川県では、タコグラフを取り付けなくてもよく、サービス残業や長時間労働を助長させていることや、タクシーの外に出てはいけないという理不尽な規則があり、労働者に不要なストレスや健康悪化の原因を作っていると指摘した。そして最後に、健康診断では「メタボリック」ばかり見ていては、健康問題の実態は見えてこない。タクシー労働者の衛生管理も情勢的な側面から理解し、賃金保障の問題にも取り組む必要があるとし、報告を締めくくった。
20人ほどの例会参加者からは、タクシー労働者の実車時間、賃金体系はどうなっているのか、雇用形態の問題とクロスさせて考察しては、職業別の疾患率などを調べてみては、など、質問や今後の研究へのアドバイスも行われた。また、タクシー同士の競争だけでなく、バス会社との競争も激化しているなか、地域の交通、公共交通としてタクシーをどう位置づけるかも課題であるという意見も出されていた。
 これまで、トラック運転手等の労働実態はテレビでよく取り上げられているが、タクシーについてはあまり着目されてこなかったように思う。顕在化されていない労働問題はまだたくさんあると気づかされた例会だった。今回、広田さんにはタクシー労働者がかかえる全般的な問題点をご報告いただいたが、次回は保健師の立場から、より専門的な報告もお聞きできるのではないかと思い、引き続きの研究に期待している。
第三回社会保障学校に参加して・・・1
鈴木方巳(金沢大学人間社会学域地域創造学類1年)
9月21日に開催された第三回社会保障学校は、午前の部として貧困、高齢者、子供の3つのテーマに分かれて行われた分科会と、午後の全体会で構成されていました。メインテーマである「人権保障をめざす反貧困ネットワークを地域から」を様々な視点から考えられたと思いました。
 私は、3つの分科会のうち第1分科会「貧困と格差の現状と打開に向けて」に参加しました。生活保護を実際に受けている方々の話が聞け、貧困と失業はつながっていることや生活保護の実情などを知ることができました。一度失業したら新しい仕事に就くことが難しく生活保護に頼らざるを得ない状況になってしまうのではないかと感じました。伍賀先生の話にありましたが、貧困が個人の責任だと考えるのは間違っていることだと思いました。今の政策では、貧困を防ぐための安全網、セーフティネットの整備が不十分で、誰でもある日突然その安全網から落ちてしまう可能性があるという現状だと知りました。日本の制度だけで貧困という問題を考えるのではなく、ドイツ、韓国の社会保障制度がどういったものかを考え、日本と比較することで日本の制度の欠点を具体的に知ることができました。この第1分科会での話を聞いて、日本の政策は老齢加算、母子加算の廃止などそれを利用している人のことを考えて行っているとは言えません。そういった人のことを考えた制度を作っていかないと日本の貧困はより一層深刻化していくように感じました。
 午後の全体会では「連帯と共同の力で、貧困を絶滅させよう」というテーマで湯浅誠さんの講演を聞きました。今の日本の貧困がどのようになっているのか、貧困問題に対する活動でどんな物があるのかなどを、「もやい」での体験を含めてとてもわかりやすく話して頂きました。生活困窮者に対して私たちがどのような態度で、どのような手助けができるか、また「反貧困ネットワーク」のように何か運動を起こす時の4カ条なども教えて頂き、自分がこれから何か行動を起こしたい時の参考になりました。
 今回の社会保障学校に参加してみて、当事者の話を聞き、実際に支援活動をしている方の話を聞くということは、とても貴重なことだと思いました。これからもこのような会に参加して、様々な人とのふれ合いのなかで貧困などの問題について考えていきたいです。

第三回社会保障学校に参加して・・・2

高瀬 由佑子(金沢大学人間社会学域地域創造学類 1年)

社会保障学校は午前に分科会、午後に湯浅誠さんの記念講演がありました。午前の分科会は三つのテーマに分かれており、私は第一分科会「貧困と格差の現状と打開に向けて」に参加しました。NPO法人金沢あすなろ会で相談員をされているYさんや、実際に生活保護を受けている方々が自らの貧困経験を話して下さいました。Yさんは相談員になる前にサラ金の被害にあっていました。給料が少なかった時期、住宅ローンを払うためやむなくサラ金に手を出してしまったそうです。他にも病気で思うように職に就けない方、母子家庭で母子加算の削減に苦しんだ方、補償金詐欺にあわれた方など本当にそんなことがあるのかと耳を疑うような話をいくつも聞きました。私は話を聞いていて、貧困は当事者の責任という考え方は間違っていると思いました。当事者の方々は求職活動や生活費の節約などの努力をしっかり行っています。生活弱者をますます困窮させる社会の構造を変えなければならないと強く感じました。
午後は、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅さんによる記念講演に参加しました。「すべり台社会からの脱却」をテーマとして、生活保護のセーフティネットがあるにもかかわらずさらに貧困に陥ってしまう人がいる、今の日本は富裕層と貧困層が二極化している、生活資源の充実と当事者の人権尊重の二つがうまく機能することで貧困をなくすことができるとお話しされました。湯浅さんの話で印象に残ったのが、貧困とは「金銭的だけでなく心の余裕が無い状態」ということでした。生活相談や支援の大切さだけではなく、その人の居場所の確保や、支えとなる人ができ自分に自信を持てるようにすることが必要だという考えに共感しました。
講演後、受付カウンターで貧困絶滅運動のキャラクター「ヒンキー」のバッジを見つけました。湯浅さん他多くの方がつけていたのを思い出し、私も購入しました。この「ヒンキー」が世の中から消えてなくなる、つまり貧困が消えてなくなる日が来るようにと切に願いました。

社会保障学校は200名近い参加者で、会場も熱気で溢れ返っていました。医療福祉問題研究会からも実行委員会に参加し、運営を盛り上げました!
鍼灸学科設置反対署名へのご協力を(お願い)
石川県視覚障害者の生活と権利を守る会 中村幹夫
 1.医療法人社団豊穣会が、経営する「石川医療技術専門学校」に、来年4月を目途に、鍼灸学科(定員60名)を新設することを発表し、準備をすすめています。
 2.視覚障害者の就労環境は著しく制約されており、その多くがあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の道を選択せざるを得ないのが現実です。健常者対象の鍼灸学校は、ここ8年間で規制緩和の名の下に倍増し、26都道府県(88校、総定員6,717名)に及んでおり、視覚障害者の就労と生活は深刻な危機にさらされています。地元石川での鍼灸学校新設のダメージは、はかり知れません。
 3.既に全国的にみて、鍼師、灸師は供給過剰の状態にあります。そのようなときに、石川県に鍼灸学校を作る必要性は全く認められません。とりわけ本県では、北信越柔道整復師専門学校も開校して久しく、毎年40名の柔道整復師を送り出しています。地域における鍼師、灸師の増加はいたずらに過当競争を激しくし、共倒れや鍼灸の質の低下を招きかねません。
 4.このような状況下で、危機感を募らせた私たちは、去る10月13日、「石川医療技術専門学校鍼灸学科設置反対連絡協議会」を発足させ、11月9日、反対決起集会を開き、県知事あての表記署名運動を実施するとともに、東海北陸厚生局への働きかけを強めることとなりました。
連絡協議会の構成員は、石川県視覚障害者協会、石川県視覚障害者の生活と権利を守る会、石川県立盲学校同窓会、石川県社会保障推進協議会、石川県身体障害者団体連合会他、全国団体を含め26団体に広まっています。
 ここに、皆様の力強いご支援をお願いする次第です。
 連絡先
   〒920-0862 金沢市芳斉1ー15ー26   石川県視覚障害者協会内
     石川医療技術専門学校鍼灸学科設置反対連絡協議会
076-222-8781


事務局短信
医療・福祉問題研究会 2008年大忘年会のご案内
毎年恒例の医療・福祉問題研究会の忘年会を企画しました。年末の忙しい時期ですが、今年一年を振り返り、会員の皆様方と大いに語り合えるひと時を過ごすことができればと思います。多数の御参加をお待ちしています。

日時:12月20日(土)18時〜20時(例会終了後 移動)
場所: 菜香楼 (金沢市武蔵町15-1 めいてつエムザ地下1階)
          TEL 076-221-3156
予算: 約 5000円

準備の都合がありますので、12月13日(土)までに、以下の連絡先へ出欠をお知らせ下さい。また、Faxご利用の方は、以下の用紙をご使用ください。
E-mail  : gachiy_haru@yahoo.co.jp (曽我)
    TEL・FAX : 076−252−7775  (河野)



医療・福祉問題研究会大忘年会 申し込み用紙

医療・福祉問題研究会 2008年大忘年会に

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