河野さんの声
『映画「靖国」をみて』
先日、映画「靖国」をみました。
大変な人気で、午後からの上映だというのに、午前10時から整理券を配布して、満席の入場でした。直前に来場された方は入場できず次々と帰って行かれました。
金沢では7月に再度上映があるようです。
石原東京都知事や小泉元首相、「右翼」市民団体等、思いっきり自らの主張を述べまくる場面が延々と続きます。これがどうして「反日」だというのでしょうか。
ただ、戦前の重要なスローガンであった「鬼畜米英」が出てこないのは奇妙なことだと思いました。
「靖国神社」に反対する人も登場しますが、小数です。
「靖国刀」の製作をしてきた現役最後の刀匠(90歳)が登場し「靖国刀」の鋳造を再現する腕の確かさには感心しました。真剣を振り下ろす時の、空を切る音は見事なものでした。李監督が、刀匠に戦争のことなどどう思うか問いかけても
にこやかに沈黙を続けます。そして、徳川光圀の「日本刀を詠ず」を朗々と吟ずるのです。現代では初めて聞くと難解なものです。

蒼龍猶未だ雲しょうに昇らず
潜んで神州剣客の腰に在り
髯虜皆殺しにせんと欲す策無きに非ず
容易に汚す勿れ日本刀

日本刀を素材に日本精神を詠じた七言絶句だと言われます。日本刀を愛好する人々は、日本刀は美術工芸品であるとともに、精神的拠り所を求めるようで、現代では、日本刀を使った殺人事件はありません。
「容易に汚す勿れ日本刀」が、90歳の刀匠の誇りの心情を示すのでしょう。

ところが、この映画の終わりには、戦前の国策戦意高揚の映画が挿入されており、戦前の中国等で、日本刀をめったやたらに振り回す場面や、「百人斬り」の新聞記事も登場します。
この映画をみて、靖国神社を信奉する人々の「品格」が、いかに下劣なものであるかを浮き彫りにしていると思いました。
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