2009年晩春倉ヶ岳ハイキング
文責:道見 藤治

ニホンカモシカ

ニホンカモシカ

山法師

朴(ほう)の木
 晩春の5月30日に、倉ヶ岳方面にハイキングしました。去年から恒例のエッセイを早速まとめてみました。山の良さを伝えることができれば幸いです。

 今回は医療・福祉問題研究会のメーリングリストで参加を募って、結局当日の同行者は神田さんと小野さんの二人でした。私だけだと脇目も振らず登山するだけになるので、今回は仲間お二人と山の興趣を十分満喫できました。ここに記録としてこのエッセイを残します。

 この日は雨になるかもしれないとおっかなビックリで挙行しましたが、帰った後に雨が降り、本当に私は「晴れ男」なのだなあと思います。天候は曇りで暑くもなく、寒くもなく絶好の日和でした。ですが、山を侮ることはできず、頂上、大池には行かずに手前の喫茶店までとしました。

 朝、石川線の電車に小野さんと私が乗り合わせました。私の元勤務先のM自動車の山岳部が一年の部報を出していまして、私の執筆もありましたので、電車内ではそれを小野さんに読んでもらいました。退屈することもなく、道法寺駅で下車しました。神田さんは車で来られ、道法寺駅近くのAコープスーパーで落ち合いました。そこで昼食などを調達し、トイレも使って10時30分、出発しました。

 数分で山に登る道となりましたが、神田さんも小野さんもコンパスが長い上、ピッチも速いのでペースダウンしてもらいました。山道に入って、小さな小さな薄青い花が咲く植物を見つけ、小野さんがデジカメで撮る。少し歩いて湧き水が飲めるようになっている所まで来ましたが、お腹をこわすと悪いからこれは封印。

 もう少し先を行くと、杉林の中で道の近くにニホンカモシカの子どもがしゃがんでいました。小野さんと神田さんは絶好のシャッターチャンスとばかりデジカメで撮っていました。やがてそのカモシカは動き出すも、左の前足をくじいたか、ビッコをひいていました。どうか無事であるように祈ってその場を離れました。小野さんは初めてニホンカモシカを見ることができてラッキーの様子でした。

 この道は森林浴ができます。小野さんは今度は大きな葉の朴(ほお)の木を見つけ、何かと尋ねるのでその葉できな粉をまぶしたご飯を包むといい香りがして食べられると私が教えました。
 歩き出して1時間20分歩いて、一つのピーク、風吹峠に辿り着いて、一休み。順調なペースです。幸い天気も崩れないようですが少しガスがかかって見晴らしはよくありません。でもここまで来れば、後は楽勝の水平な道です。

 そこをしばらく歩くと朴の木の花を見ることができました。これは私も初体験です。やがて切り立ったガケがあり自然美を味わって、集落が段々近づき、山田がありました。オタマジャクシがいっぱい泳いでいました。ほんとに何年ぶりかのご対面。ようやく山の中の喫茶店に到着してホッとしました。その頃には薄っすらと汗ばんでいました。

 喫茶店の脇に東屋があり、それぞれが手に入れたオニギリを食べ、小鳥の鳴き声の中、満ち足りた気分になる。その後、喫茶店の中に入って、コーヒーやショウガ湯を注文しました。

 すると気忙しいオジサンが入ってきて、朴葉ままを食べ始め、思った通り、きな粉のまぶしたご飯が出てきました。それを見て神田さんは買う気になりました。帰宅後私は次の俳句を詠みました。

  山の店 香りも売るか 朴葉まま

 この喫茶店は営業開始してから、かれこれ20年ほど経つそうで、常連さんがいること、冬でも営業しているとのことです。店の名は「倉ヶ岳」です。年配のご夫婦がやっております。また店内には飼っている鳥の写真もありました。鳥が卵のときから飼って、大きくなると自然に返るそうです。またその名は付けず、アヒルは「アヒル」と呼ぶとのこと。帰り際にはマスターが外へ出て「セキレイ!」と大声で呼んでいました。トイレも使って、ここには約1時間くらいいたでしょうか。

 この先の登り坂を行くと大池があり、そのまた先には山頂、標高560m余に至ります。今回は雨の心配から、喫茶店までに留めました。

 これから倉ヶ岳にまつわる歴史を紹介します。室町時代、今の石川県、加賀の国で蜂起した一向一揆は当時の守護大名、富樫政親を倉ヶ岳に追い詰め、前述の大池に富樫政親が入水しました。すると鞍だけが浮いてきて、そこから「くたがだけ」と呼ぶようになったとか。その後加賀は「百姓の持ちたる国」として約100年、農民が政治を司りました。誇りある北陸道の歴史の1コマです。

 今日は通り道に、いくつものヤマボウシの花が咲いていました。そこで今回は次の俳句を詠みました。

  敗将に 供えの花か 山法師

 さて、午後1時20分頃、帰路につきました。神田さんは目ざとく、タラの木や野イチゴを見つけられ、私たちに教えてくださいました。帰り道は水平な道20分と下り坂1時間余り、楽勝でした。
 バードウォッチングはできませんでしたが、鳥のさえずりを聞きました。ウグイスの谷渡りは微笑ましく、ヤマドリのボッ、ボッは山ならではです。

 途中に往きでは気付かなかった小さな沼を発見し、その上にかぶさる木の枝にくっついているモリアオガエルの泡の卵を確認しました。往きで封印した清水の湧き水も飲み、元気で3時に下山しました。

 今回はそれぞれのキャラがあって、楽しくハイキングできました。植物や動物との出会いがあって有意義な時間が持てました。

人数が増えると楽しさは膨らみます。この登山を契機に、山に出掛ける仲間を増やしたいと思いました。登山の愛好家も高齢化していると聞きました。確かに辛い登山ではありますが、満足感は金で買えない贅沢品ですね。
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