介護認定の実際 大川 義弘 |
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はじめに 何か手引き育みたいなタイトルになってしまいました。介護認定には私が感じているだけで一次判定の理論的な間遭・訪問調査員の訪問調査の客観性の間麓・訪問調査月の特記事項記載上の力量のばらつきの問題・訪問調査員とサービス提供事業者が同一の間親・主治医意見書の記載の問題・訪問調査と主治医意見書の整合性の間規・認定審査会のレベルの均一性の問題などといった実際上の問題が多くあります。さらに、必要な介護を必要なだけ提供すべきなのであって認定は不要であるといった制度そのものに関わる議論まであります。それらの間麓のいくつかについて、認定審査にたずさわっているものとして実際経験していることと、その中で感じていることを述べたいと思います。 1金沢市での流れ 金沢市では30の認定審査のための合議体があり、それぞれ5人の委員からなっています。委月は2名が医師で後の3名は看護婦・保健婦・介護福祉士・薬剤師などから選出されています。委員は医師なら医師会から指名をうけて決められているように、各職能団体が指名しているようです。どういう基準で指名しているのかは開けば教えてくれるのかもしれませんが不明です。また審査委員の決定の仕方は市町村によって異なっているようです。各合議体では第一回の認定審査会の時に委員の互選で合議体長を決めましたが、金沢市では全員医師がなっています。 認定審査会の開催日の約1週間前に下記の3つの資料が認定審査員の所に送付されます。多いときで30件ですが最近はほとんど25件分です。第一の資料は介護審査会資料です。この資料の記載項目は、新規か更新かの申請区分、1号保険者か2号保険者かの被保険者区分、年齢、性、一次判定結果、一次判定警告コード、要介護認定等基準時間、施設か在宅か・在宅とすればどういうサービスをどの准度の頻度で受けているかといった現在の状況、障害老人自立度と痴呆性老人自立度、中間評価項目による状態像のレーダーチャートとそれぞれの得点、全73項目の訪問調査結果、点滴・痺痛の看護・碍瘡の処置など12項目の特別な医療などからなっています。第二の資料は認定調査票で特記事項を記載してあるものです。第三は主治医意見書2枚で、合計4枚が資料というわけです。その資料を各認定審査月はあらかじめ目を通します。日を通す基本点は@2号被保険者なら特定疾患に該当するかどうかA一次判定警告コードはあるかB73項目の訪問調査結果や特別な医療について、特記事項や主治医意見書から修正すべき所はないかC二次判定はどう考えるかD状態像はどれに該当するかなどです。このとき明らかにおかしい点や矛盾する点は、各認定審査会担当の金沢市介護保険課の職員に連絡し、訪問調査の事業所や主治医に連絡し確認してもらっています。が主治医に直接連絡することは少なく、訪問調査の事業所に問い合わせることがほとんどのようです。ちなみに認定審査員の所属する医療機関や施設の方の認定審査はあらかじめその認定審査会にかからないようになっています。認定審査が始まったばかりのころはこの事前の下調べに3時間以上はかかっていました。現在は25件で1−2時間です(これは私の個人的な経験で、他の審査員がどの程度かけているかは資料がありませんので分かりませんが、私の審査会の他の審査員の話ではそれ以上かけている方もいらっしゃいます)。 審査会当日は上記基本点の@からDまでを審査月全員の作業として行っていきます。そして二次判定を決定します。一次判定を変更した場合は、その理由(たとえば特記事項よりとか状態像よりとか主治医意見書よりとか)を記載します。最近はこれに加え、認定有効期間を12ケ月(通常は6ケ月)とするかどうかを決めています(厚生省通知があり、金沢市では2000年10月から12ケ月に有効期間をのばす基準を決めました)。 認定審査会は2週に一回、市役所の会議室で午後7時半から行われます。初期の頃は不慣れのため多大の時間を要し、11時頃までやった合議体もあったようですが、現在は9時前後には終わっているようです。 2 一次判定の問題 73項目の訪問調査結果や特別な医療について、特記事項や主治医意見書の内容を元に訪問調査の項目を修正するわけですが、それを終えた時点で一次判定をやり直して、一次判定を確定します。このときに、審査委月の口から、「え、何で」という声が挙がることがあります。最初の一次判定より介護の手間から考えて介護量が多くなるだろうと予測される修正をしたと思っているのに、修正後の一次判定では逆に要介護度が低くなってしまった場合です。これを「逆転現象」と言っている人もいます。たとえば「食事渋取」という樹形図では、その一番右下の枝分かれが特別介護です。その点数が18.1以上と以下で要介護時間が11.5分も違います(前者が長い)。この場合特別介護とは碍瘡の有無・尿意便意の有無・排泄後の後始末・樵下・食事摂取などです。そして数字が大きければ自立していることになります。18.1以上というのは18.1以下より自立度が高いということになります。それなのに要介護時間が自立度が高いほど長いという奇妙なことになります。それもこの場合11.5分も違うので要介護度が1変化することとなるのです。このような現象は22カ所にあるようです。これは一次判定の樹形図が使用しているS−Plu sという統計ソフトの使い方の問題のようですが、感覚的にはとても納得いかない現象です。 次に痴呆の問題です。厚生省も見直しをするための検討を始めていますが、実状を簡単に述べます。まず訪問調査項目の問題行動は19項目があげられていますが、これらがいくら有りとされても、要介護度はほとんどあがりません。施設入居の高齢者を対象にしたタイムスタディからつくられた一次判定ソフトですから、俳個や、火の不始末や、物忘れがあっても施設内ならあまり問題にならないので介護時間はあまりかからないと判断されるのです。これらは在宅ですと深刻な間遭になるわけですがそれは考慮されていません。このことは早くから問題視されていたので、金沢市では独自の試案を作成し、これにもとづき、いわゆるピンシヤン痴呆の方の要介護度判定を行っています。一一次判定より2段階要介護度が上がることも希ではありません。二次判定を行った後、状態像の例(厚生省はそれぞれの介護度別に10ずつの状態像をあげています)を特定するのですが痴呆の場合当てはまるものはほとんど見あたりません(そのような状態像を想定していなかった)。 一次判定の変更率は金沢市では25.4%です。より重度に変更が19%、より軽度に変更が6.4%でとなっています。全国ではそれぞれ21.3%、16.1%、5.2%となっています。変更については厚生省は不適切事例をあげて変更に抑制をかける姿勢でしたが金沢市では認定審査会の裁量でおこなっています。が、自治体によっては異なっているようです。 3 訪同粥査員の訪同調査の客観性の岡撞 いくつか触れなければならない間邁もあるのですが、耗面の関係で高齢者の医療福祉が持たなければならない「自立支援」という観点から、感じていることを述べます。たとえば食事摂取に時間がかかるということで施設の介護職が食事介助をするのと、時間がかかっても自立支携のため見守るのでは、前者のほうが要介護虔が高くなります。しかし実際の手間は後者のほうがかかる場合もあると思います。このことは洗身・着衣・整容など多くのことに当てはまります。頑張って何とかやっている人と、同じ介護レベルでも介護してもらっている人では要介護度が違ってくることになりかねないわけです。介護保険により自立支援というインセンシティブが働らくかどうかについてはいろいろ議論がありますが、認定審査会での仕事をとおしてはその方向に働く制度ではないなと感じています。 4 主治医意見書の記載の開題 結論からいって記載は充分とはいえません。主治医意見書が威力を発揮するのは2号被保険者が特定疾病に該当するかどうかの判定時です。私の経験では1例のみ特定疾病に該当せず介護保険対象外と判断されました。これ以外では介護の手間という観点からの記載が特記事項にないと二次判定に生かされることはほとんどありません。一次判定を変更した場合は、その理由をあげるのですが、主治医意見書よりとされるのは10%程度です〈この数字でも、そんなにあるのかと思うほどです)。 5 訪岡窮査と主治医意見書の整合性の岡題 訪問調査に麻痺と拘縮という項目があります。主治医意見書にも同様の項目があります。それらが食い違っていたらどうするか。厚生省の通達では判断基準が違うので、主治医意見書の記載で訪問調査の方を修正しないとなっています。その他、短期記憶や問題行動など項目は同じだが食い違った場合の判断が困難な項目もあります。厚生省と医師会の綱引きでできた感が否めず、整合性という面で開通を残しています。 6 認定審査会のレベルの均一性の開題 認定審査が始まって半年たった時点で、各合議体の訪問調査項目の修正率や一次判定の変更率や審査時間などがまとめられました。それをみて驚いたのは3dの合議体で一次判定の変更率が0%の所から60%近くの所まであったことです。審査対象にそれほどのばらつきがあるとは思えませんのでこれは各合議体間のばらつきということになると思います。全国共通の判定と厚生省はうたっていますが同じ研修を受けた合議体間でもかなりのばらつきがありなかなか困難なようです。要介護度で利用限度額が決まるわけですから、ばらつきのある要介護認定では利用者の不利益になる場合があると思います。ただ介護保険実施後のサービス利用状況が 限度額の50%以下なので、間親はおおきくならないのではないかと思われます。また2000年5 月以降では10.3%から39.5%と変更率のばらつきは減少傾向にあります。 終わりに 審査員として私は、他の審査員と共同して介護の手間という観点から審査対象の方の状況を最大限把握し、実際の介護状況にあった認定審査になるように努力しているつもりです。しかし必要なサービスが、必要なだけ提供されるという理想を思い浮かべつつ認定審査に当たっている面があることも事実です。 (おおかわ よしひろ/城北クリニック) |
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