第91回例会報告 「生活保護の実態調査からみえてきたもの」 金沢福祉専門学校 冨家貴子 5月31日の例会では、「生活保護の実態調査からみえてきたもの」の報告、意見交換が行われた。その内容は、@2006年度からの老齢加算完全廃止による、高齢生活保護世帯の生活変化(全日本民主医療連合会の調査結果報告)、Aホームレスだった方の退院後の聞き取り調査結果報告(城北病院の取り組み)、の2点であった。 @に関して、食費の節約だけでなく、被服費や教養娯楽費を捻出できない、交際費は1ヶ月5千円以下が9割で、町会費が払えない、地域行事に参加できない、親族との交際もできない等、生活保護基準の低さから、生命の再生産と社会関係の維持が同時に困難になっていた。また、老齢加算廃止を知らなかった世帯が約半数もいたこと、要介護認定を受けている世帯が多いに関わらず、住環境は高齢者の身体状況に適していなかった。 Aに関して、対象者は、21人中20人が男性、年齢は50〜60代が殆どであった。退院後、アパート生活を始めても、アルコール依存症や孤独死が見つかる、新しい友人関係を築けていない等、生活がうまくいくわけではないこと、また、生活保護基準の低さから、住環境が良好でなく(騒音、老朽化)、電化製品を購入も廃棄もできないでいた。しかし、このような困難な状況にありながら、「未来に望むこと」を尋ねると、「もう一度結婚したい」、「家族で生活したい」、そして、「もう一度働きたい」等、生きがいや人との交流を求めていた。 質疑応答・意見交換では、◎高齢者の社会生活の確立にはお金が必要(老人クラブや町内会活動など)、◎厚生労働省は、ホームレスの支援は、最終的には「就労」としているが、福祉事務所のマンパワーを増やし、仕事のあり方を変えないと本当の支援はできない、◎「健康で文化的な最低限度の生活」の実現には、国民による具体的な生活保護基準の提起が必要等の意見が出た。また、◎金沢の医療ソーシャルワーカー間での生活保護や貧困問題の共有の必要性、◎当事者に実態を語ってもらうことの必要性も取り上げられた。 今回の報告を聞いて、高齢者の最低生活の検証は、高齢者の生活全体を見なければ検証したとはいえないことを改めて感じた。また、日本だけでなく先進国の貧困対策が「就労支援」を中心としたものになっているが、ホームレスの状態から脱却して、まず何が必要なのか、当事者に語ってもらうことの重要性と必要性を考えさせられるものであった。 |