特集にあたって
                  編集委員会
 本号は、今年が「国際高齢者年」であることから、躊躇なく特集のテーマに設定した。時折りしも、カウントダウンが始まった介護保険をめぐって広範な議論が交わされ、年金制度や高齢者医療保険の「大改革」が提起されるなど、高齢期のあり方が大きく問われるなかでの国際高齢者年となった。国際高齢者年の理念に立ちもどって現下の保健・医療・福祉を総点検し、真の改革を考える機会にしたいとの思いが本特集には込められている。
 特集は、三つの部分から構成されている。ひとつは、国際高齢者年の理念を介護、医療、年金にどのように生かし具体化するかについて論じた三つの論文、二つめは、高齢者に関わる活動に取り組んでいる成体の代表による国際高齢者年へのメッセージ、そして三つめは、各年代の人々からの高齢化・高齢者についての発言である。
 第一部冒頭の井上論文は、特集全体の総論として、まず国際高齢者年の経緯、趣旨、基本的な考え方を、使用されている用語の厳密な意味を確認しながら明らかにしている。そのうえで、高齢者のための国連原則を介護保険にどのように生かすべきか、日本の現状や各地の取り組みを踏まえつつ具体的に提起している。大川論文は、高齢者医療に携わる医師の立場から、まず何よりも「エイジズム」すなわち高齢者に対する差別や儒見を克服して正しい高齢者観を持つことの重要性を指摘する。そして高齢者医療が、高齢者を特性を踏まえて総合的に評価して保健・福祉の分野との連携を進め、高齢者の生活中心の医療へと転換するとき、はじめてエイジズムの克服が医療の分野で可能になると指摘している。田中論文は年金問題をとりあげ、国連は無年金者を生み出すことなくすべての高齢者にその国の経済にふさわしい年金を実施することを求めているが、日本では生活実態をみない保険料や制度自体の不備によっていまや皆年金は空洞化しつつあり、年金改正法案もそれを強める方向でしかないとする。そして、無年金・低年金を、国庫負担による給付の引き上げと未加入・滞納の解消によって解決すべきことを提起している。
 第二部では、全日本年金者組合石川県本部、石川県社会保障推進協議会、高齢者の人権を
守る市民の会、北陸婦人問題研究所、金沢市民営委員児童委員協議会、石川県老人クラブ連合会の六つの団体の代表からメッセージを寄せていただいた。いずれも豊かな高齢期をめざして第一線で奮闘されている団体ならではの鋭く含蓄のある内容である。
 第三部では、10代から90代までの10人に登場していただいた。国際高齢者年が「すべての年齢の人々の社会をめざして」をテーマにしていることを受けたもので、他にはないユニークな企画だと自負している。順に読むと人生の移り変わりが見えてきてはっとさせられる。
 今年6月には医療・福祉問題研究会も呼びかけて「国際高齢者年・石川NGO」が発足した。本特集が、石川での、そして各地での高齢者の人権保障をめざす取り組みに少しでも役立てれば幸いである。
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