●特集/国民生活の変容と医療・福祉
生活保護の現状の問題点
広田 敏雄

はじめに
今回の報告を書くにあたって、昔の資料なども引っ張り出し調べてみると、昭和52年6月15日の相談カードが生活保護の事例では一番古いものであった。
 時代の流れとともに、生活保護申請を取りまく状況は変わっている。
 研究誌12号では「21世紀はインターネットで生活保護申請」の題名で、「生健会ホームページ」に寄せられた生活相談を書いたが、今回は「生活保護110番」というホームページの紹介と生活保護の現状と問邁点を考えながら「オンブズマン」での改善方向についても考えてみたい。

(−)「生活保護110番」の紹介
@ 相談の特徴
 インターネットのホームページ「生活保護110番(http://www.din.or.jp/ ̄oyama/ind
ex.htm)」は、現職のケースワーカーによる生活保護「相談掲示板」を中心とし、生活保護制度のしくみをわかりやすく説明している。
 相談者は、インターネットの検索サイトから「生活保護」のキーワードでさがしあて、
相談を書き込むものがほとんどのようである。
 2003年1月中旬からの約1ケ月間に「相談掲示板」へ寄せられた相談「100件」をまとめてみた。
 相談者の構成でみると、住まいは「東京都」が一番多く13件、北海道が9件、あと23都道府県で8件から1件までとなっている。男31件・女67件。20代が39件、30代37件・40代15件・50代1件となっている。
 インターネット相談の特徴だろうか、ほとんどが20代30代の若い世代である。
 本人以外の相談が約半数で、親のことについては29件、親戚や友人が24件であった。
 現在受給中の相談は17件で、81件はこれから生活保護が受けられるかというものである。
 相談のなかで見えてくる問題点を次のキーワードで数えてみると、精神疾患28件、失業8件、母子世帯21件、DV3件、借金14件であった。
 不況と失業、それに加えて医療や福祉サービスの切り捨ては、私が言うまでもなく国民
生活に大きな影響を与えおり、寄せられる相談も、こういった社会の状況が反映している内容となっている。
A 相談だけでなく、制度についての議論も
 上記で紹介した相談掲示板でも、時々、相談者・ケースワーカー同士・第三者(私など)の意見が違うことがあり、相談方法や制度の解釈、それ以外でもいろいろ議論が進むときのために、目的別の掲示板が用意してある。
 「激論掲示板」というのもあり、現状での制度の問題点や、ケースワーカはじめ役所の対応についてのあり方、生活保護受給者への中傷など、相談とは違った観点で議論がされている。
私の今回の問題提起は、これらのなかで交わされた相談や議論も紹介しながら行いたいと思う。

(二)見えてくる問題点を考える
 寄せられる相談にはすでに病気や失業などで収入がないものが多く、今後の生活の見通しがない状態が多くある。
貯金がなくなるまで漫然と過ごすのでなく「車を処分する必要があるのか」などを相談することも含めて、福祉事務所、ケースワーカーを利用する必要があると思うのだが、現状ではそれほど福祉事務所の敷居が高いのか、何をためらって相談に訪れないのだろうか。
 広く、国民に開かれた「生活保護制度」となるには、いろいろ多くの間蓮点があると思われるが、私の問題意識としていくつかのことを指摘し、考えてみたいと思う。
@ まだまだ根強い「偏見」
 相談掲示板ではまれだが、激論掲示板では熱い議論となる事がある。
 一市民を名乗っての発言で「前から思ってたんですけど、生活保護っておかしくないですか?本当に必要としてる人がもらってなくて、あんたが何で?もらってるのって人が多いですよね、働けない人にあげるのは全然構いません、が働けるのに働かない人大勢いますよ」というようなものが次々と出る。
 自分の身近な方の様子を紹介しながら、生活保護制度はこれでいいのかと、何回も他の参加者とのやりとりが続く。
 貧しいもの同士のやっかみではないかとも思えるのだが、善意かもしれない、こういう意見も偏見を生んでいくのかと思うと気になる。
 このやりとりの途中でケースワーカーからは、「ただ、わりと世間一般の方は生活保護に対してこういう印象を持っているのではないでしょうか。‥・…私もワーカー1年目はこんな気持ちの時期ありましたから。…・‥むしろ冷静に見れば意外に(失礼l)大半はまじめに生活しているんですね。」こういう書き込みもある。
 A ケースワーカーの専門性の確保
現在は、一般行政職を辞令書一枚で「3科目主事ケースワーカー」(大学等において厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する指定している32科目のうちいずれか3科目を修めて卒業した者)として配置しているのが大半のようである。新規採用での登用なども行われており、専門性に欠けた職場状況との指摘とともに、受給者に対する的確なケースワークがされているとはいいがたいものがある。
 自分の娘が生活保護申請をして当事者となったケースワーカーが「ば〜かやろ〜=事務屋がワーカーをすると、こういうことになるのですか?私は、福祉職として役所に入り20年。クライエントにこんな傲慢な態度は、他の同僚だってしません。」と自らへの処遇を書き込んだものもあった。
 専門職で業務をしていると名乗りながら、自身の書き込み内容は過激なものとなっていっ
たが、専門職をめぐる考え方がでていて参考になるやりとりが行われた。
 また、役所全体の中での、ケースワーカーの位置付けについても、注目するものがあった。
 ケースワーカーの職務が「配転されたくない職場」となっているというのである。
 今回は詳しい内容について検討する事ができなかったが、「役所の中の、嫌われ職場、やる気のないワーカー。これが、実態ですか?ワーカーの皆さん、あなたがたも、「3年の辛抱」と自分に言い聞かせて仕事をしているのですか?」(ケースワーカーからの発言)といったものもある。
 さらに、ケースワーカー確保が追いつかず、全市的な人員削減方針の中で「アルバイトケースワーカー」を大量に導入するとの、大阪堺市の間邁も話邁になっている。
 B 容易でない窓口申請
 窓口の人間が認めないと、申請書を渡さないという実態、そして、それが法律に反する行為だと認識しないケースワーカーが多いようである。私たち生健会が全国各地で生活保護相談をしているなかでは、申請に訪れたとしても、窓ロでは「5回追い返してそれでも来る人だけ申請させる」などという状態が多く報告されている。
 この掲示板でも、「失礼とは思いますが、あなたの文面からはその必死さと決意が伝わってきません。まずもってご自分がどう自立していくのかを考えるべきです。私は面接員だった当時、母子家庭の方の相談は原則としてすぐにはお受けしないようにしていました。」と青いているケースワーカーがいる。
 この部分だけで判断するのは乱暴なのだが、「原則としてすぐには受けない」と言い切るところなどは、「そういう方こそ相談・援助が必要だ」との基本的な部分の理解の乏しさが、ケースワーカー全体にあるのではないかという思いを持つ。
 議論のなかでも、私は繰り返しそのことを鋭明するのだが、それが「水際作戦」の原因となっている事の認識を持ちながらも「相談面接自体が申請権を侵害したとされる判例はなかった」とか「道理のない申請をする人がいる」という説明を繰り返すばかりである。
 また、保護の停止や廃止の時に「辞退届」を青かせることを一般的な手順としていることが、重大な権利侵害だという問題意識無しに、全国的に行われているようである。
C 扶養に対する現在の国民感情
 現状では、民法の規定に従うという形で絶対扶養義務者への扶養の依頼を手順化し、書類をもって回答をさせる方法がとられている。
 相談事例では「……しかし、扶養照会について担当の方に確認したところ、どんな事情でも規則により扶養照会は絶対必要だと言われてしまいました。**さん(回答者)のお話だと、担当の方によく相談すれば扶養照会無しでお願いできるのですよね?(少なくとも制度的には可能?)若しくは住んでいる自治体によって方針が違うのでしょうか……」このように親子とはいえ過去に確執を持って離反した者達に、一律的で一方的な押しつけとも取れる、扶養照会をすることについて苦言を含めたものもある。
また、夫によるDVなど暴力的な行為もあり離婚した母子家庭の母親に、事務的な指示で子どもの養育費の請求を迫る事についての相談もある。
先日、研究会のスウェーデンセミナーの場で奥村氏から、スウェーデンでは成人した者には、親子でも扶養義務を定めていないとのことを知った。
個人の自立を目指す生活保護が、経済的な扶養を求めることの矛盾を、生活保護制度には限らず、国民感情のなかで議論したいものである。
D 大きな影響を与える失業問畏
私は現状の失業間邁は生活保護制度運用の問題として、一番大きな課題ではないかと思っている。
 長引く不況と、失業者の増大は、失業者数や失業率という数字が増えたという問邁では
なく、国民の就業に対する考え方に大きな影響をもたらしている。「この前うちのコンビニで求人広告出したら1週間で60人応募があったよ。採用2人なんにな。中高年の応募がすごくて絶句したよ。」
(激論掲示板より)低賃金アルバイトを先を争って奪い合うという状態で、大学卒業者ですら就職難がいわれ、能力の低いものには低賃金雇用の場さえなくなっている。
こういうなかで「働く場を探す」・「働く」という行為や努力が「むなしいこと」となっている現状がある。「青年障害者」が働くことを避け、生活保護受給に異常な執着を燃やしているという指摘がある、また障害者に限らず、一度保護を受けると求職活動がおろそかになる、という指摘もある。受給者個人が「働く意欲を持たない」という見方もあるが、実際に働く場もなく探しようもない時に、そのことだけを責められるものではないと思う。
 ケースワーカーも就労指導についてそれぞれの考えを披露してはいるが、「保護廃止になった途端に働き出したという例を多く見てきました。すぐに就職できるご時世ではありませんが、いままでの就労指導(指導という程偉そうな事をしているわけではない)はなんだったのか?結局保護廃止が一番の自立策か?と首をかしげるばかりです」という問題提起に、「私も実は大卒後に就職浪人を経験しているんですよ……両親から金銭的援助の打ち切りを言い渡され、慌ててバイトを見つけ、生活費を家に入れつつ就職活動し、かろうじて公務員試験に受かった身なのです‥‥‥そういった経験から、私は就労指導については、文書指導や稼働能力不活用による保護の停廃止の可能性示唆をけっこう頻繁におこなっています」と、自らの就職経験を書くのみで、ケース検討などにもとずく「就労援助のノウハウ」などは見受けられなかった。
 このようなかで、厚生労働省「社会援護局長通知」として、「就労可能な被保護者の就労・求職状況の把握について」(2002年3月29日社援発第0329024号)では「福祉事務所が就労可能と判断した被保護者1人ずつに対し(世帯単位ではない)、働いた日に○印をつける書式の収入申告書を毎月提出させる」「働いていない被保護者1人ずつに対して、毎日どのように求職活動をおこなったかを記入させる求職活動報告書を毎月提出させる」といった新たな方法を通知してきており、「機械的な就労指導」に一層拍車をかけないかと危惧される。
E 精神疾患と生活保護
 今回まとめた相談の三分の一が、精神疾患の訴えをしている。
 短い相談ではその程度や、生活のなかでどう影響しているかは判断できないが、そのことが大きな原因の一つとして生活保護を必要としていることが考えられる。
 先にあげた、就職難も精神疾患を持つものには大きな「ハードル」である。
 相談事例で「アンプレラさん 男性無職20歳宮城県、生活保護について、対人恐怖症で働けない者です。生活保護の申請の制度についてですが車、パソコンは持てるのでしょうか?就職活動する時使いたいです。後、この年齢でいくらぐらい生活保護をもらえますか?精神病も負担してくれると医師がいっていたので。後、貯金はいくらまで持てるのですか?よろしくお願いします。」など、青年層の精神疾患の訴えに「母子世帯の若い母親で離婚にともなうダメージ」「独身青年の引きこもり」などが多くある。
 まだまだ先の長い人生で、生活保護しかよりどころがない現状、その生活保護すら真の自立に役立つのだろうかと思うと、生活保護の実態から他施策への提言をする事の重要性を感ずる。
 次のような相談事例「もちろん精神疾患というのは、たった一度の面談で分かるものでもありませんし、私の経験からも、893さん(893=やくざ:*カッコ内広田)などが、就労できない口実を「無理矢理」書かせた一片の診断書でごり押ししてくることも少なくなく、とても悩ましいものです。
 さらに言っておけば、たとえ精神疾患があったとしても、適切な治療・服薬によって就労可能な人はいますので、精神疾患があるから必ず働くことができないということでもありません」(ケースワーカーの相談に対する回答から)
 特に悪意を持ったとは思えない相談に対して、不正受給を例にあげ回答することを何とも思わないケースワーカーの回答もある。
 もともと、一定の割合で精神疾患患者が存在するとなると、生活保護を必要とする事はなんら不思議なことでなく、他施策の制度弱体化で生活保護制度を利用するしかなくなっている状況での、むしろ当然の利用法と思うのだが、精神疾患を訴える申請者が増えるなかで、そういう概念を考慮にいれない「65歳以下はまず就労指導」というような「年齢による就労指導」が優先しているように思える。
F その他多くの問窺点から
 生活保護制度での問題点としていわれているものをあげてみると、
・信頼関係、人権無視の「一括同意書」・家賃の基準越えでの転居指導
・一律的な自動車の売却指導
・生命保険の解約指導
・高校進学が認められていない
 その他問題と感ずるものすべてにふれることができないが、相談のなかでも出てくるこれらのことも、生活保護の改善運動のなかでの課題として指摘されている。また、私自信が関わったことがない「ホームレス」「外国人」などをはじめ、まだまだ思いもつかない
問題も含めて数多くあると思われる。

(三)問題の根底にあるものとして
 国の施策として生活保護制度が存在する限り、国の財政状況によって制度の運用が左右されているといえる。
 生活保護「適正化」政策をみると、1954年以降の「適正化」から、1981年の「123号通知」の数次にわたる「適正化」に、国庫負担の削減と適正化の関係をみることができる。
 自治体への交付税の削減によって「123号通知」の徹底をはかる過程で保護受給率が急減し、1987年には札幌で餓死事件が起きている。
 これらが、窓口に訪れる申請者とケースワーカーとの信頼関係や、生活への援助指導を根底から破壊する方向で、生活困窮者の側には餓死、ケースワーカーの精神障害というかたちで表れていると私は思っており、単に窓口の間邁としての議論では解決できない問邁である。
 また、役所全体での生活保護制度に対する位置付けが、他の福祉施策の弱体化で生活困難となった世帯の援助をどうするかととらえられずに、増え続ける保護受給率に目を奪われ「不正受給防止」が声高に叫ばれている雰囲気が無いだろうかと気にかかる。担当一人の受け持ちは60件が目安といわれる中で、80件・100件の受け持ち件数が日常化し、新規採用職員の80件スタートなどや大阪では一人300件という事態までも情報交換されている。
国や自治体の福祉施策後退姿勢が、具体的な財政削減も含めた制度への影響として関連し、直接的な制度運用にも表面化しているのではないかと思われる。

(四)オンブズマンの提起にあたって現状の窓口では、申請書を渡さないという「申請権の侵害」などを、慣例や運用にしてしまっている福祉事務所が多く見受けられる。
 また、申請者や受給者に対して法や規則、「生活保護実施要領」にすら反する相談回答、指導がされている現状がある。
 今回取り上げた問題を中心に、不服申し立てや審査請求とまではいかないが、システムのなかで解決を見いだす方法として、オンブズマンはどうかと考えてみた。
 ただ、私個人は、今までこのような方向で考えたこともなく、十分実用的な提案ができるとは思わない中で今を迎えている。
 今回は現時点での考えを問題提起とし、多くの方からのご意見を聞くことにしたい。
@ 現在、相談者をサポートしているもの
 行政的なものとしての対応では、生活保護法で「民生委員の協力」を第22条に定めている。しかし、実際の全国各地での対応はかなりの差があり、制度の認識不足によるトラブルも聞くことがある。また、その職務責任は無いに等しい。
 その他、総務庁「総合行政相談所」など、一般的な各種相談窓口的なものがある。インターネットで検索すると、宮城県で「県政オンブズマン」が、生活保護の苦情処理をした事例をはじめ、いくつかの自治体が検索された。
直接的なサポートではないが、福祉指導監査はじめ、役所内での各種監査でも相談と申請状況について、申請者の権利擁護という視点で見る必要性があると思う。
民間としてはどうか、生健会は秋田で「加藤裁判」の中心となるなどの活動はめざましいが、全国的には組織格差が大きく、全く組織がない県もいくつか存在する状態である。
裁判を支援する「生活保護裁判連絡会」はメールと電話でのサポートがある。
ホームレスへの生活保護の活用もあわせた支援で、大都市はじめ各地で活躍している。
金沢での高訴訟のように、個別事例でのサポート組織がある。
議員の生活相談によるサポート、医療機関における「MSW」などによるサポートが全国的にある。それぞれの対応状況については違いが大きいと思われるが、地域での生活相談とからめての相談・サポートとして大きな役割を果たしていると思われる。
今回の紹介の中心となった「生活保護110番」などインターネットだけでの相談は、障害者の自立援助団体など、各種団体でのサポートもみうけられる。
あと、「公的扶助研究会」など、ケースワーカーによる各種自主研究組織や、所属する労働組合、また個人などでも、直接・間接のサポートがされているのではないかと推測される。
A他施策などでのオンブズマンの状況
行政の施策として、当事者(事業者及び利用者)以外の公正・中立な第三者機関が、専門的かつ客観的な立場から評価する事業、「第三者評価」が「介護保険」や「保育所」
 「福祉施設」で行われている。介護保険では、提供サービスの不満や苦情を受ける「苦情処理機関」を設置している。医療では「患者の権利オンブズマン」が福岡を中心に東京でも設立されている。
行政全般の施策の中では、先に紹介した宮城県での「県政オンブズマン」のようなかたちでのものが全国各地で見受けられる。
 その他、自主的な民間団体としての各種オンブズマン・バーソンの活動が急速に日本全国で広がっており、インターネットで見ていると、次々と新しい組織が生まれている様子がわかる。
「研究誌12号」では、本研究会会員の寺本紀子氏が「介護保険の権利擁護のしくみと高齢者の人権を守る市民活動」のなかで、日本の福祉オンブズマンについての概要と、自らも関わる「国際高齢者年・石川NGO、介護保険オンブズバーソン委員会」の活動をわかりやすく書いており、私の今後のイメージづくりに役立つものとなった。
B オンブズマンの内容として
 具体的に法律として提案している「生活保護裁判連絡会」の「私たちの側からの生活保護法改正(社会扶助法)試案2002年改訂版」の関係する部分を紹介する。
 『第57条オンブズマン
オンブズマンは、請求者及び利用者の利益を代弁する槻閑であり、自治体の長が、人権の尊重と生存権の保障に深い理解と洞察を持つ学識経験者、弁護士等から選任する。
オンプズマンは最低でも3人とし、意思決定については合議制とする。オンブズマンは行政からは独立した存在であり、非行や心身の故障等の解職事由に該当し、かつ、議会の同意がない限り、任期中はその意に反して解職されることがない。オンブズマンは、利用者からの苦情処理にあたり、福祉事務所長に対して、是正勧告や意見の表明をおこなう。また、自ら必要な調査をおこない、社会扶助実施のあらゆる課題について、法の目的達成のために、意見表明や勧告をおこなうことができる。』と、生活保護法に「オンプズマン」を条文化し、内容としては「行政のシステム」として自治体の長が選任するとしている。
 生活保護110番の「激論掲示板」でのオンプズマンについてのやりとりでは「特定の政党や宗教集団に依っていたり、行政主導でつくられる現行のオンプズマン制度では理想の実現は難しいと思います。」といった、「人選についての懸念」がケースワーカーから書き込みがされた。
 他に生活保護についてオンブズマンとしてふれられたものを探しては見たが、私の知るところでは見つかっていない。
C まとめ
 私の現時点での考えとしては、「オンプズマン」はかなり有効な手段ではあるが、現状のままでの導入は困難が予想されると思っている。
 問邁点として考えられるのは、利用者と担当ケースワーカーとのその後の関係である。
 指導援助がともなう相談活動には信頼関係が大きく左右すると思えるが、オンブズマンに提起した段階で、極端に力関係が違う両者がうまく信頼関係を続けられるのか、それが出来ない場合の対応策はどうするのかという点に問題が残ると思われる。
 まだ他にも問題はあるとは思われるが、開かれた生活保護制度への改善は重要な課題であり、「オンプズマン制度」は大いに期待できるものだと思う。私自身の生活保護制度改善について考える今後の課題の一つとしたい。


 (ひろた としお/金沢生活と健康を守る会)
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