特集 石川県地域医療計画と住民の健康
患者の立場から望む地域医療計画

「そらまめ会」(じん膿患者の会)顧問掘 清
 私は、患者の立場から望む地域医療計画というテーマをいただきましたが、何を言おうか考えたのですが難しいのです。私は、患者が今日医療に何を求めるかということを中心
に話をしていきたいと思います。
 私は、国鉄に42年間勤めました。その間、企業の中で労働者側と使用者側から労働基準法に定められた労働安全衛生委員という委員が任命されるわけですが、私は労働者側委員ということで16年間労働安全衛生委員会の委員として活動してまいりました。
 そして、退職しましてからたまたま病気をしまして、じん臆病ということで認定され、じん臓病の慢性疾患管理をきちっとするという立場からっくられた「そらまめ会」という会の役員を長年やり、今日に至ったわけです。
 私は、こういう中から考えてみますと、先ほどから地域医療計画とか、いろんな難しい言葉がでるのですが、私自身、一つは今の政治がどうなっているか頭に置かざるを得ない。
私が国鉄に勤めているとき国鉄が世論から集中攻撃を受けました。そして、国鉄の労働者が働かないから赤字になるんだ、だから、国鉄を民営化しないといけないんだということで、いろんな形で集中攻撃を受けました。確かに国鉄に改善しなければならないような問題があったのは事実です。しかし、マスコミが捉えたほど荒廃していたかといえば、そうではなかったと思います。では、なぜそういう攻撃を受けたのだろうか。それは政治の輪で国鉄を捉えたから集中攻撃を受けたのだと考えます。
 そうして考えてみますと、それでは今の医療はどうなのか。よく言われますが、医者はもうけすぎだ、老人は病院に適いすぎだという世論がっくられたことは事実です。そしてそういう中から出てきたものが、医療総合対策本部から出されてきた中間報告とか、いろんな計画です。これは、何なのかと考えざるを得ない。私は、国の政治というものは、国民の立場に立ち、また国の医療というものは国民の、そして一人一人の患者の立場に立ったものではないといけないと思います。それから、行政は国民の命と健康を基本にして考えなければならないと私自身は考えています。 私は、そういう立場からいうと、今の医療はどうかなと考えざるを得ません。最近、私たち患者としては、病院に対する攻撃が出てきているなかで、病院にかかりにくくなっているというのが事実だと思います。私も、現在まだ病院にかかっています。今まであなたは今月医療費をどれだけ使いましたかという証明はもらったことがなかったのですが、このごろは必ずきちっと出ます。それを見て、これだけかかったのかと私自身も考えるわけです。
 中間報告を見てみますと、非常にすばらしい言葉で書かれているわけです。しかし、それは国の政治の中で医療費を抑制するという立場から、どう医療を考えているのかということで出されているとしか考えられないわけです。
 慢性疾患を持っ者は、長期にわたって管理をしていかないといけないのです。特に現代のように激しい社会においては、慢性的な患者が非常に多くなってきています。その人たちの管理をどう行っていくか、それがこれからの患者会の問題であります。「そらまめ会」の運動のなかでこういうことがありました(じん臓がそらまめのような形をしていることからこうつけたそうです)。
 じん臆病というのは、薬物療法以外に食事療法が大切だということでいろいろな医療方法を勉強します。その中で不幸にしてじん臓病から人工透析療法を受けることになった方の体験談を聞こうと考え、一人の患者を呼んでいろいろ話を聞いたわけです。その患者は、企業検診の中でタンパクがおりていると指摘され病院で検査を受けなさいと言われた。その時、患者はじん臆病がどんな病気か知らなかったが、臓の病気は治らないということだけを知っていたそうです。そして、病院へ行ったら、じん臓の病気ですからしばらく通院なさいと言われた。しかし、その人は、じん臓病がどんな病気で、何をしなくてはいけないかを知らないからそのままにしておいた。すると、2回目の検診にまたひっかかり、病院へ行ったら、もう手遅れだ、なぜちゃんと管理をしなかったのかと言われ、透析に入られた。その患者が言うには、やはり医療の中でその病気に対してきちっと管理を指導していただけなければ、患者はわからないんだ。もっときちっと管理の話をしていただければ、透析に入らなくてよかった。その人はそのことで企業をやめられ、一過間に3回の透析を受けているので、仕事に就けず家庭が崩壊しました。
 慢性疾患の病気というものは、慢性疾患になる以前に医療の専門的な人たちのアドバイスが大事になってくる。そこで、私たち患者として必要なことは、今の医療行政のなかで、医療従事者が真剣に患者の立場に立って医療をやっていけるものなのかどうなのかを考えなければならないということです。ただひとこと言えることは、医療総合対策とか地域医療とかいろいろな難しい言葉が使われていますが、患者一人一人はその内容はわかりません。患者自身はとにかく医療にかかりやすく、医療が患者の立場に立って行ってはしいということが望みなのです。だから今の医療計画が、一体どういうふうに患者にかえってくるのか、このことが非常に大事な問題だと思います。私も行政が一体医療をどう変えようとしているのかを勉強しながら、地域の中で患者の立場から望む医療を行政に要求し、運動しなければならない。そのことが、これからの患者にとって大事であると考えております。
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