脚特集/保健・医療・福祉と地域づくり
特集にあ た っ て
編集部

                                                   

 1994年度から「老人保健福祉計画」が全自治体で一斉に動き始め、保健・医療・福祉は
本格的な地域計画化の時代を迎える。

 地域計画の策定は、多くの問題点を抱えてはいるものの、ともかくも保健・医療・福祉の計画と実施がそれぞれの地域の選択に委ねられるに至ったこと、換言すれば、地域が保健・医療・福祉の中身を主体的に創り出す時代への形式がひとまず整えられたことにある。
 
 このことは、行政のみならず住民白身も含めたその地域全体が、保健・医療・福祉を通じた地域づくりの力量を試される時代に入ったことを意味する。
 
 今回の特集テーマには、こうした問題意識が込められている。 本特集は、4本の論稿から構成されている。
 
 高橋典成氏「沢内村の保健・医療・福祉と村づくり」は、1993年度の研究会総会(1992年12月)における記念講演をもとに執筆いただいたものである。
 
 高橋氏は、沢内村の保健・医療・福祉の内容を取り上げながら、それらが行故による一方的な実施ではなく、婦人、高齢者、障害者など村民が組織づくりも進めつつ積極的に関わり、住民白身が地域づくりを主体的に担うかたちで取り組まれてきたこと、これからは一人ひとりが豊かに生きていくという“文化”を基本においた「保健・医療・福祉・文化の連携」が求められることを提起している。

  鈴木森夫氏「地域の総合的福祉施設めざしてスタート」は、住民の建設運動によって建設され1993年7月にスタートした特別養護老人ホーム「やすらぎホーム」の活動内容を、入居者・利用者の状況を交えながら紹介したものである。
 
 鈴木氏は、入居者の状況に反映されている高齢者の生活や現行制度の様々な問題を指摘するとともに、住民と一体となった施設づくり、在宅支援機能をも備えた“地域の総合的福祉施設”づくりをホームの今後の方向性として提示している。
 
 谷口妙子氏「地域福祉の拠点づくり」は、地域福祉の拠点として再生がめざされている金沢市の「善隣館」について、北陸婦人問題研究所が実施した聞き取り調査の結果をまとめていただいたものである。
 
 谷口氏は、調査結果から、不安定な職員体制、資金不足と財政難、施設間の大きな格差等の問題点を浮き彫りにしたうえで、真に地域に開かれた施設づくり、安定した財政基盤をもつ事務局と地域の自主的活動による支援、人権の尊重と担い手の教育等を今後の課題として提起している。
 
 馬渡健一氏「老人保健福祉計画についての全自治体キャラバン」は、表題のとおり、石川県医労連が92年秋から3次にわたって実施した自治体キャラバンの報告である。

 ここには、計画づくりにあたる自治体の財源確保等の困難さ、策定過程や調査実施における問題、住民への姿勢などの自治体ごとの内容と特徴が生々しく語られている。
 
 「老人保健福祉計画」の全国的な動向や政策的課遁については、今回は取り上げることができなかった。

 具体的な進展も踏まえて、次号で検討したい。
 
 いずれの論稿も実践と経験から、アプローチと表現はそれぞれ異なるが、行政の積極的な責任遂行と住民の主体的活動との前進的な結合こそ、地域づくりに不可欠な条件であることを共通に提起している。
 
 この点の評価も含め、地域づくりをめぐる積極的な議論の展開を期待したい。


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