−<特集>介護保障と介護保険
ホームヘルプサービスと介護保険
                   林   和 子
1、はじめに
 平成12年の介護保険の導入にむけ、福祉の現場はもちろんの事、福祉業務に関係のある
民間業者の動きが俄に騒騒しくなってきました。
 金沢市の在宅福祉サービスの供給機関である福祉サービス公社に介護職員として採用され、現在、公社の相談・援助チーム(お年寄り介護相談センター兼務)に配属されています。仕事の内容は、在宅福祉サービス(市の受託事業……ホームヘルプサービス、デイサービス、入洛サービス、配食サービス等)の相談、申請手続き、訪問調査、判定、サービスの調整、実施機関への連絡調整に日々追われています。
 介護保険導入で公的サービスを担って来た公社、中でもホームヘルプサービスの在り方について日々の実践のなかから考えていることを述べたいと思います

2、公的サービスと利用者のニ−ズ
 公的サービスの絶対量の不足は数年前より指摘されており、デイサービスについては数ケ所のセンターで利用待機者が(又、利用できても利用回数が週1回と制限されて)いる状況です。待機の理由として1)近年デイサービスの利用者が急増している(閉じこもることで次第に意欲が低下することを心配したり又、介護疲れの軽減等で本人及び家族の希望も多い)2)地域によって利用施設の片寄りがある。3)介護する職員の配置基準がB型(1日15人の利用施設)で看護婦を含めて4人での受け入れ対応に限界がある事などが揚げられます。待機者や利用回数増を望む方には民間のデイケアの利用をも勧め紹介していますが、デイケアは寝たきりの方や、70歳未満の方は利用できずに今も待機状態が続き、待機の期間も施設によってかなり違いがあります。ヘルパー派遣も待機は無いのですが地域によっては、派遣までに時間がかかる場合
もあります。
 ホームヘルプサービスはサービス利用者の『自立支援』の観点から、生活をして行く上で因っている事や出来ない事を具体的に援助内容(掃除とか買い物)を決めた上でホームヘルパーの派遣となります。利用の状況としては、体調不良の間一時的に利用する場合もありますが、週1回の(安否確認の意を含み)家事援助から援助が拡大される場合が少なくありません。
 ホームヘルパーの利用の8割は高齢者です。訪問すると生活の状況を一気に喋り、喋り終えると「ちょっこりきいてもろたらスツキリしたわ」「またしばらく頑張れるよ」の一声はヘルパーだから聞くことができる大事な一言です。
 86歳のSさんは一人暮らしの男性です。一人娘は県外に嫁いでいます。80歳のころ緑内障と言われ治療に専念したが2年前から光を感じる程度の視力となりそのころに妻を癌で亡くしました。住み慣れた地を離れたくないとの強い意志があり、ヘルパーを利用することになりました。視力障害があり、ヘルパー以外の援助者がいないため、週4回のヘルパーの訪問と週2回のデイサービスを利用することになりましたが、デイサービスには馴染めず休止、ヘルパーの訪問以外は家でラジオを聞いて過ごす日々でした。寂しさに耐えられず、娘と同居はしたが金沢が恋しくその後も一人暮らしを試みたが結果は同じでした。Sさんの心配は、万が一の事があったとき誰
にも気づかれずにいるのが辛いといつも心配し、定期的にヘルパーが来てくれるということがどんなにか心づよいといつも口にされていました。Sさんは中途失明なので家の事は調理以外ほとんど出来ました。ですから社会参加できる(視力障害者の囲碁教室など交流の場でかける)機会を手助けする事や、安否確認のための巡回訪問などヘルパーの関わりができていればもう少し好きな金沢で生活を続けられた思います。Sさんのように生活することの意欲を支えるための援助、生活の質の関わりも自立支援の重要な要素と考えます。

3、サービスの視点
 介護保険制度の基本的考え方など枠組みについては情報が流れていますが、具体的内容についてはなかなか見えてきません。「高齢者が自立した生活が送れるよう、老化に伴い介護が必要な者に対して社会的な支援を行う仕組みを確立する」高齢者自身の身体機能からみての援助となって居ます。身体機能の援助+介護保険=自立した生活といった公式になることも考えられるとしたらSさんの「思い」をどこに組み入れますか?
 日本介護福祉士会では、高齢者ケアサービス体制整備検討委員会の報告の中で支援アセスメントの視点として「利用者の生活背景や利用者の価値観に沿って組み立てること」を基本的な視点においている。さらにこれまでのホームヘルプ活動の実践の積み上げのなかから「主体は利用者」であり、援助は生活の場として「住み慣れた居宅においておこなわれる」ことを前提としている。介護サービスは生活の流れの一部として提供されるものであり、それだけを取り出して「ニーズ」を把握することは不可能である。としています。
 利用者の生活状況を誰よりも理解し、把握できるヘルパーが利用者のニーズをとらえる視点がサービスを提供する重要なキーになるのです。
4、利用者の求める公社であるために
 ホームヘルプサービスは対人援助です。「その人がその人らしく生きる」事の援助です。住民の生活も多様化しており福祉サービスの相談も多様化しています。Sさんのように生活(生きていく)していくことの援助だけではなく、生活の質の援助を求める声も開かれます。多様化したニーズに応えるにはサービスメニューを増やすことではなく、ニーズに合わせ多様に対応できる体制をつくることがいま必要とされています。
 全市を1ケ所で管理することは今でも限界に来ているうえに、ヘルパーの勤務が直行直帰では連絡等においても効率が悪く活動に限界があります。ヘルパーステーションを市内数ケ所に設けることでもっと細やかなサービスが提供でき、ヘルプサービスが利用しやすくなると思います。公社としての真のサービスの在り方を発揮すべき時に来ている今、サービスの発想を転換し、運営方法を転換(デイサービスセンターの浴室を地域に解放するなど)を真剣に取り組んでほしいと思います。

5、おわりに
 介護保険制度が実施されるまでの3年間が公社にとってもヘルパーにとっても今後の存続に関わる重要な時期です。住民から必要とされるヘルパーであるために日々の活動を大切におこなっています。金沢市もヘルパーに対してrあなたは24時間働けますか」と問いかける姿勢を持っていただきたいと思います。
  (金沢市福祉サービス公社介護職員)
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