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第78回例会報告
ほんとうの自立とは 夢のあるくらしを求めて

〜「障害者自立支援法」のゆくえと今後の医療・福祉を考える〜

城北病院 MSW伍賀道子

 去る10月10日、ひろびろ作業所・ワークショップひなげし・工房シティ・医療福祉問題研究会が呼びかけ団体となって開催した、講演会「ほんとうの自立とは 夢のあるくらしを求めて」に参加した。当日は、金沢市保健所駅西健康ホールの会場に溢れんばかりの多くの参加者で、当時国会審議中の障害者自立支援法への関心度の高さを如実に表していた。

 残念なことに、講演者の一人でもあった秋元波留夫氏が当日体調を崩され、そのため急遽講演は、秋元氏が事前に準備した原稿を代読するという形となった。講演の中で、秋元氏は15年戦争を知る精神科医という経験を通し、戦時中の悲惨な精神医療の実態から、闇に葬られていた多くの問題に光を当て、そして二度と戦争犠牲者を生み出さないために、平和憲法を守り抜かねばならないという確固たる信念を痛切に訴えられていた。中でも、戦時中の精神医療の実態というと、精神病院は戦争によって精神に障害を負った傷痍軍人の療養所と化し、その多くは食糧不足による「飢え」という苦しみの中で命を絶えた人が圧倒的に多かったということである。まさに、戦争遂行という流れの中で、精神障害者の多くは社会の厄介者として殺されたも同然だったのであるこのように、秋山氏は現場での多くの経験を通しながら、精神障害者の明るい未来のためにも、平和な社会を築く土台となる憲法9条を守りぬく運動を、全国各地で広げていくことの大切さを述べられていた。

 次に、きょうされん常任理事の藤井克徳氏が、「障害者自立支援法案の行方と私たちに問われるもの」と題した講演の中で、障害者自立支援法案の経過や問題点について、ポイントを押さえながら話をされた。全国各地での多くの当事者団体の行動や訴えもあり、郵政問題による衆議院解散と同時に一時は廃案となった障害者自立支援法案だが、10月31日に衆議院を通過し、平成18年4月より施行される予定となった。介護保険統合を前提としたサービス利用料や障害医療の1割定率負担は、本来であれば公的に保障されるべき個々の障害を、個人や家族の責任においてカバーすべき問題であるというような、誤った障害観を植え付けかねない。藤井氏は最後に、今後の障害者自立支援法に対し、現時点の生活水準を下げないような対応を迫ること、そして厚労省や各自治体が行う障害関係予算の適切な見積もりを見守ることを、参加者に訴えていた。

 藤井氏が最後に参加者に寄せた、茨木のり子氏の「一人の人間の真摯な仕事は、思いもしない遠いところで、小さな小さな波をつくる」ということばのように、全国各地で活動している平和や福祉を守るためのまっすぐな運動は、小さな波だけでなく、国をも動かす大きな波へと変化していく力となることを信じて、自分の暮らしている場所から発信していくことができればと思う。

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