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第81回例会報告
「生活保護の実態と課題」
城北病院 MSW川合優

 2006年4月15日、「生活保護の実態と課題」をテーマに、加賀市議会議員の新後由紀子氏と金沢あすなろ会の三井美千子氏に報告していただいた。
 新後氏からは「加賀市の生活保護行政の実態」についての報告があった。加賀市ではバブル崩壊後の平成5年頃から、中心産業である温泉観光が急速に低迷した。山代・片山津温泉宿泊施設もピーク時の昭和51年には72あった施設数も、平成17年には35施設と半分以下となっている。相次ぐ温泉宿泊施設の閉鎖が加賀市の生活保護行政にも大きな影響を与えている。平成5年から平成16年にかけて、生活保護被保護世帯が117世帯から520世帯へと、約4,5倍に増加し、保護率で見ても、平成16年の石川県の保護率が4,31‰に対し、加賀市では9,65‰と非常に高い数字となっている。温泉施設の閉鎖により解雇された従業員は、年金・社会保険もなく、失業と同時に生活保護に頼るしかないケースが多い。さらに、サラ金業者に多額の借金をしている人も少なくない。
 また、温泉旅館で働く従業員の雇用問題についても報告があった。加賀温泉では接待さんに給与制度をとっているところは少なく、一日の総売上総額の何パーセントかが接待の持分として配分される奉仕料の仕組みをとっているところが多い。一日9時間から10時間働いても、2000円、3000円にしかならない日もあり、土、日、祭日を休むと罰金5000円から10000円を支払わないといけないなど、労働条件は決して良くない。さらに、旅行会社やお客からのクレームにより解雇になることもある。
 生活保護世帯の増加に伴い、加賀市では担当職員も増員しているが、生活保護申請前に相談が優先されたり、就労支援が強化されたりと、機械的な対応になっているのが現状ということである。こういった状況をうけて、現在、これまでばらばらであった人々が、「生活と健康を守る会」として集まり、当局との要望交渉や市民の活動を始めている。
 次に、金沢あすなろ会の三井氏からは「多重債務と生活保護の現状」についての報告をうけた。小泉内閣の元で推し進められる、税制改革、社会保障改悪に加え、雇用の悪化や収入の減少と、国民を取り巻く環境は大きく変化しつつあり、そういった状況の中で、クレジット・サラ金による多重債務者の被害は増大し、破産申立件数は平成16年度で211402件と、3年連続21万件を超えている。生活が苦しい中で、サラ金から一度借り入れをすると、高金利の支払いを余儀なくされ、結局は借りては返すという自転車操業になってしまうことが多い。サラ金業者は29.2%という高金利で貸付し、支払いが滞ると、過剰な取立てをおこなう。債務者は過剰な取立てを恐れ、返済するために、別のサラ金会社から新たな借り入れを繰り返し、多重債務への道を歩み、破産や自殺へと追い込まれていく。自己破産件数の増加に伴い、自殺者数も年々増加し、平成16年では年間7947人となっている。
 今日の多重債務の激増は、失業、労働環境の変化、社会保障の貧困さなど、日本社会・経済・金融の構造上、必然的に発生しているといえる。
 景気回復傾向といわれる日本において、今回二人が報告していただいた、生活保護受給者や多重債務者の激増は、日本の格差社会を露呈しているように感じた。今後も国民の負担が益々増加し、生活保護受給者や多重債務者が増え続けると予想される。そういった実態を正確に把握し、行政側に訴え、運用改善の要望をしていくことも大切であると感じた。

2006年度研究会総会報告

 7月15日、記念講演会に先立って2006年度の研究会総会を開催しました。
 最初に、横山世話人から「2005年度活動報告と2006年度活動計画(案)」、広田世話人から「2005年度決算と2006年度予算(案)」、河野世話人から「雑誌会計報告」についてそれぞれ報告があり、それを受けて議論が行われた。
 議論では、研究会誌『医療・福祉研究』の発行および販売のあり方、他団体との連携のあり方、部会のあり方、研究例会の企画、研究会のこれからの役割について意見が出された。『医療・福祉研究』については、1500部印刷してきたが販売が進んでおらず、見直す必要があるのではないかとの世話人からの指摘と提案があった。具体的には、会員分200部、執筆者分150部、販売用300部の合計650部という提案である。この提起をめぐって議論が交わされ、部数と印刷費用との兼ね合いからの再検討、個々の会員の販売努力も含めた販売体制の強化など、多くの意見が出された。これらの意見を踏まえて、世話人会で引き続き検討し、次号への対応を判断することを確認した。
研究例会の企画については、療養病床削減の問題を医療受ける人権を侵害する問題として位置づけて検討すべき、同時に療養病床の存否自体を原則的な見地から議論すべき、格差・貧困問題を「格差」論の検討と「不平等」という視点の明確化という視点から議論すべき、などの意見が出された。また、関連して、研究会として制度・政策の転換が及ぼす影響を実証的に明らかにしていく必要があるとの指摘もあった。活動計画で提案した内容をこれらの意見を踏まえて見直し、世話人会で最終的な企画をまとめることとした。
部会のあり方については、研究会として基本方針を明確にして再編も含めて配置していくべきとの意見が出された。世話人会から、現在は会員の自発的な意志によって自由に設けることができる方式をとっており、基本的にはこの方向を継続しながら増やしていきたい旨の説明と提案があり了解された。
他団体との連携については、研究会の役割ともかかわって議論があった。その要点は、研究会の発足当時と比べると、関連する多くの研究会や団体が大きく増えており、会員もそれぞれの研究会等で活動していることから、連携とは言いながら実際には分散化の傾向も見られるが、全体としては裾野が広がり発展してきていること、そのことを踏まえて、あらためて研究会が果たしていくべき役割について検討し、20周年以降の活動のあり方を明らかにする必要がある、ということであった。重要な問題提起として受け止め、今後、世話人会を中心に議論を継続していくことを確認した。             (文責・横山壽一)

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