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医療・福祉問題研究会会報NO.91
2009.4.15
第95回研究例会のご案内
日時:  2009年5月9日(土)14時〜16時半
会場:  金沢市松ヶ枝福祉館 4F集会室
テーマ: 『障がいのある人の就労の問題』
報告者:  山本 仁 氏 (金沢大学附属特別支援学校教頭)


障害者自立支援法に促されるまでもなく、障がいのある人にとって、安定した仕事に就くことは切実な願いでした。けれどもいろいろなバリアによってその願いは満たされずに今日に至っています。
 今回お招きする報告者の山本氏は金沢市障害者施策推進協議会委員として「働く」を担当され、また任意の研究会である「しゅうけん」の創始のメンバーとして研鑽を積んでこられました。障がいのある人の就労でネックとなる問題は何なのか、それをどう工夫すれば問題をクリアできるのか、更に問題解決を図るため、金沢市障害者計画においてどのような施策を展開しようとしているのかを具体的に山本氏に報告していただきます。
 フロア発言として、金沢まちづくり市民研究機構で2007年度の「障害のある人の就労環境整備」をテーマとして研究された市民研究員の方にも、その成果の提言などを語っていただきます。
 遅々として進まぬ「障がいのある人の就労」に追い風となる議論が沸騰される例会としたいと思い、多数のご参加をお待ちしております。
※ 当日、例会に先立ち13時から集会室にて事務局会議を開催します。
ご都合のつく方は、あわせてご参加ください。
第94回例会報告
『国際的な視点からハンセン病問題を考える』
 石川保険医協会 小野栄子 
去る2月14日(土)、第94回研究例会を労済会館で開催した。今回の例会では莇昭三さんが「韓国、小鹿島(ソロクト)とドソン定着農園を訪ねて」と題して報告を行った。
 莇さんが韓国を訪問したのは、昨年8月末。「ハンセン病元患者と共に生きる石川の会」とともに、“日本と韓国のハンセン病政策の違い、その経緯と経過の解明”など、4つの問題意識をもって国立小鹿島病院とドソン定着農村を訪問された。
第1の問題意識は、韓国では日本に比べてかなり早い時期に「癩予防令」が廃止された経緯、経過の解明。朝鮮は1910年に日本の植民地となり、1935年に朝鮮癩予防令が施行されたが、1954年2月には予防令が廃止される。対して日本は予防法が廃止されるまでに、戦後50年以上もかかっている。その違いは何なのか。
第2の問題意識は、韓国では既に1963年2月の段階で「隔離主義」を捨て、「在家治療」に転換し、各地域に定着している。日本で在家診療を行っているのは埼玉、沖縄、神戸ぐらいであるのに比べると大きな違いがある。
第3の問題意識は、療養所の将来構想。日本では、ハンセン病問題検証会議が今後の療養所のあり方として、地域に開放された施設づくりを提言した。しかし、どの施設も順調に進んでいない。一方韓国では、1961年から「定着農村」事業が開始され、過半数の元患者が一般社会で生活を行っている。また国立小鹿島病院のある小鹿島は既に海水浴場中心の「観光地化」が進められている。ここにも、日韓に大きな違いがみられる。
そして第4の問題意識は、小鹿島慈恵医院(小鹿島病院の前身)の4代目園長周防正季が、1942年6月20日に患者・李春相(イチュンサン)に刺殺される事件の真相解明であった。
今回の訪問は1〜2日の短い滞在であったこともあり、上記の問題意識の解明には至らなかったが、癩予防法の早期廃止、在家主義への早期転換が行われた背景には、宗教の役割だけでなく、療養所の医師や看護師たちが、地域の住民に対して積極的に啓蒙活動を行ってきた歴史があったことも明らかにされた。そういった地道な積み重ねが、現在の“開かれた療養所”、“開かれた島”につながっているのではないだろうか。また、植民地下の小鹿島では、断種が結婚のためだけでなく「懲罰」として行われていたこと、額への焼き鏝、周防園長の銅像への敬礼など、日本の患者と同様の被害に加えて、さらに厳しい隔離と深い差別を受けていたことも明らかにされた。
 莇さんは今年も、小鹿島訪問、ソウルでの資料収集を計画している。研究会でも久しぶりに研究ツアーを計画してはどうだろうか。
会員レポート
「2.8失業者・労働者の労働相談会」に参加して
金沢生健会 広田 敏雄
雇用不安が広がるなか、全国で「派遣切り」などの「相談会」が開催され、石川県でも各種団体やネットワークが「相談会」や「相談電話」を行い、マスコミなどでも報道されていますが、私も2月8日におこなわれた「相談会」の相談員として参加し学ぶところが多かったので、その時のようすと感想を紹介します。
 午前10時より午後4時まで、JR金沢駅東口もてなしドーム地下広場で「2・8
 失業者・労働者の相談会」(労働・生活・医療相談)としておこなわれたもので、当日の参加スタッフは50名余り、相談は14件と発表されています。相談者は通りすがりの人、日ごろより地下広場で段ボールの囲いを利用して寝泊まりしているホームレスの方などでした。
 会場は地下広場のほぼ中央に相談コーナーとしてついたてで仕切りをつくり、展示コーナーなども設置されました。労働相談には、県労連のスタッフなど、生活相談は弁護士やケースワーカーなど、医療相談は民医連の医師・看護師・保健師などがあたり、それぞれ専門的な観点から相談者をサポートしていました。当日は参加スタッフのために、カレーライスの差し入れがされ、相談者らにもふるまわれました。
 私も相談をさせていただいたのですが、最近首都圏から移動してきたという私と五〇代の女性の方がおられ、生活保護申請のアドバイスをしました。さっそく翌日に「生活支援課」で生活保護申請をされ、住むアパートも確保されたということで、「駅の地下で寝るのとは全然違う、相談して良かった」と話されているそうです。
 能登のお寺出身ということだけで、あまり多くを語らなかった50代男の方、生活保護の利用には拒否感を示しながらもカレーを食べ、昨日は酔っ払いの喧嘩があって眠れなかったと人なつっこく話をされ、こちらが用意した毛布にくるまり椅子の上で眠られました。
 他にも何件か相談をしたのですが、高齢の方が多く話をしたみなさん全員が「生活保護」の必要があるものの、生活保護の利用ということをすぐに受け入れて、申請に行くという方もありましたが、まだ「そういう気持ちではない、そういったことは考えていない」などの返事をされるかたもいます。また、いままで制度利用につながらなかった経過などをお聞きするなかで、なぜ今までこの人たちが放置されているのかと、あらためて問題を感じました。
 昨年末に話題となった「派遣村」以来、「生活保護」制度には大きな変化が起きています。まず、役所も国民も「若い人にも生活保護が必要」との認識が定着しました。そして、「生活保護」制度は「人を幸せにする制度」との認識が(当たり前の考えなのですが)国民の中に、私たちの中にも再認識されたとの思いをますます強く持つことが出来ました。
会員レポート
都留民子さんの講演「フランス労働者の働き方とくらし」を聞いて
城北病院 ソーシャルワーカー 川合 優
2月14日の新春社会保障講演会にて県立広島大学教授の都留先生の講演を聞きました。フランス社会の仕組みや国民意識などについての話を初めて聞いた私にとって、都留先生のお話は目から鱗が落ちるようなお話でした。映画「シッコ」でみた桃源郷のようなフランス社会をよりリアルに詳しく説明してくださりました。
フランスの国民意識には「より少なく働き、より豊かな生活を」、「これからの労働者は余暇・文化活動のなかに生きがいを見出すべきである」、「失業はいやだが、だからといって労働力の安売りはしない」といった考え方があると先生は話されていました。こういった国民意識の背景にはフランス国民の高い人権意識があり、そしてその人権を保障するための手厚い社会保障制度があることも分かりました。「年金は無拠出でも最低限の年金(生活保護の1.5倍)があたる」、「低所得世帯は無拠出で健康保険制度に加入でき自己負担なし」、「出産は無料」、「学費は大学まで無料」といったフランスの社会保障制度は夢のようにも聞こえましたが、現実にフランスで実施されている制度あり、日本の社会保障制度との差に愕然とさせられました。そして、今の日本の社会保障制度にしか目が向いていなかった自分の考えを根本から覆させられる思いでした。
最後に先生は「日本人はもっともっと生活保護を利用すべきだ」と主張されていました。「生活保護受給者がもっと増えることによって国の負担が益々増えるので、国としても社会保障制度を改善せざるを得なくなるだろう」とのことでした。確かにその通りだと感じると同時に、社会保障制度が改悪され続けている今こそ、国民一人一人が声を上げ、制度を改善させる大きな力としていくことが大切だと感じました。
都留先生のお話を聞いて、目の前が開けたような感じがして、目指すべき社会保障制度の姿をみることができたと思います。是非もっと多くの人に都留先生のお話を聞いてほしいと思いました。
事務局短信

◎ 2009年度医療・福祉問題研究会総会
  日時:7月11日(土)14:00-15:00
  場所:金沢市松ヶ枝福祉館
       ※ 講演会等のご案内は後日行います。