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医療・福祉問題研究会会報NO.93
2009.9.1
第96回研究例会のご案内
日時: 9月29日(火)19時〜21時
会場: 近江町交流プラザ 研修室2
      (金沢市青草町88 近江町いちば館4階)
テーマ:「2009年4月に導入された新要介護認定基準は、一体何だったのか?〜利用者・介護現場および認定審査会の混乱〜」
講演者: 大川義弘さん(城北クリニック院長)
     橋爪真奈美さん(石川県保険医協会事務局員)
2009年4月から、要介護認定の仕組み(@認定調査項目と調査内容の変更、A一次判定ロジック(コンピュータープログラム)の変更、B認定審査会による二次判定方法の変更の3つ)が大きく変わりました。そのことで、この間、利用者をはじめ介護現場、認定審査会などは大きく混乱させられてきました。
  新要介護認定の仕組みに移行して半月もしないうちに「経過措置」(届出により従来の要介護度を継続することが可能となる)が出され、厚労省は「要介護認定の見直しにかかる検証・検討会」を設置しました。そして、検証の結果、調査項目の大幅な見直しが行われ10月から再度新たな基準で調査等が実施されるようです。この間の二転三転は何だったのか・・・、石川県保険医協会が独自で行った調査結果も報告させていただきながら、みなさんで再度要介護認定のこと、介護保険制度そのものについて議論できたらと思います。
多数のご参加をお待ちしております。
医療・福祉問題研究会総会記念講演
「社会保障の再構築―市場化から共同化へ」
鈴木 靜(愛媛大学) 
7月11日、石川県生涯学習センターにて、石川県社会保障推進協議会、いしかわ自治体問題研究所と合同で記念講演、横山壽一氏(金沢大学地域創造学類教授)「社会保障の再構築―市場化から共同化へ」が開催された。参加者は100名を超え会場は熱気にあふれた。今回の講演は、横山氏の新著(同タイトル、新日本出版社、2009年)に基づく内容であり、社会保障構造改革が具体化され、矛盾を抱え込んだ医療、福祉の現場の苦悩に応えるものであった。出席者は熱心に、時に大きくうなずきながら聞き入った。
講演の概略は、以下のとおりである。
まず「社会保障構造改革は何をもたらしたか」について話された。社会保障構造改革の当初のもくろみは、グローバリゼーションに対応した社会保障の組み換えである。給付・負担構造と供給体制の両面から仕組みを大きく転換し、市場化・営利化による社会保障の再編・転換が目指された。同改革は紆余曲折、若干の修正はあるものの、主要な部分は実質化された。この結果が、@社会保障の変質と機能の低下、A国民生活の破壊と格差の拡大、B社会保障の市場化・営利化の限界―市場優位の破綻、C社会保障における市場的感覚の浸透・拡大である。
 次に「社会保障をめぐる新たな展開と対抗関係」について展開した。政府は国民から大きな批判を受け、構造改革路線の修正を余儀なくされる。これを受け、現在、政府や財界からは「社会保障の機能強化論」が提案されているが、この内容は更なる市場化促進と増税に他ならない。社会保障の市場、とりわけ保育市場は低賃金労働力の確保も視野に入れる等、とんでもない内容である。
 最後に「社会保障の再構築―市場化から共同化」と題し、将来展望を話された。社会保障の再構築にあたって、@行政の役割と責任の再構築、A市場的公平論の克服と共同性の復権、B社会保障財源の確保と国民経済の転換が必要であることを強く主張する。横山氏は、国民の私たちも行政責任を問う際に「行政の失敗」論に振りまわれてきたが、今後必要なのは行政の「何が」問題か、「いかなる」改革が必要かを明確にすることだと迫る。また意識的に、個々に市場的な損得勘定の考えを脱し、生活における自己決定と共同性の相互促進的関係をつくることの重要性を迫る。
 フロアからは、福祉現場で「市場的感覚の浸透・拡大」が進んでいる現状と危機感が意見として出された。同日の懇親会でも、出席者はさまざまに「市場的感覚の浸透」について熱心に議論を重ねた。これに表れているように構造改革がもたらした弊害は大きいと誰もが認識しつつも、これまで十分に言語化、論理化できなかった。研究者も同様であり、これまで政策分析は部分的側面の指摘が多かった中で、横山氏の本質をついた政策分析と展望は画期的である。政策の意図する本質を踏まえ、私たちが自己決定と共同性に基づく社会保障を再構築するため、それぞれの場で努力を重ねたい。
2009年度総会報告

 7月11日、2009年度総会を石川県生涯学習センターにて開催しました。総会に先立って、総会記念企画として横山壽一氏の講演会を行いました。今回の企画は、石川県社会保障推進協議会、いしかわ自治体問題研究所、そして医療・福祉問題研究会の三者の共催で開催されました。横山氏は「社会保障の再構築―市場化から共同化へ」と題して、5月に出版された同タイトルの著書の内容を中心に、社会保障構造改革の帰結と現局面の特徴について取りあげ、そのうえで社会保障の再構築を進めるうえでの課題について問題提起されました。会場がほぼ満席となる盛況ぶりでした(講演の内容については、別途掲載)。
 総会記念企画終了後、場所を変えて総会を開催しました。総会は、曽我千春会員の司会のもとで進められ、まず横山世話人から「2008年度活動報告と2009年度活動計画(案)」の報告があり、次いで広田世話人から「2008年度決算報告と2009年度予算(案)」の報告および神田監事から「会計監査報告」があり、以後、それらをめぐって議論されました。
 議論では、「小川著作集を読む会」などの自主的な研究会へ「補城制度」を設けるべき、
河北町の後期高齢者医療の無料化について例会で取り上げてはどうか、研究例会100回記念の企画として、100歳の高齢者を集めてシンポジウムを開催してはどうか、横山氏の著書について徹底して学ぶ研究会を設けてはどうか、生活保護の自立支援について検討の場があればよいなどの意見がだされ、さらにはいくつかのスタディ・ツアーについて参加の呼びかけがあった(中国のハンセン病における調査、ハンセン病国際シンポ)。また、自主研究会の企画案内がありました。
 以上の発言に対して、世話人会を代表して横山世話人が答弁し、いずれも積極的な提案なので、研究例会やその他の企画のなかで具体化していきたいとの発言がありました。そして、「2008年度活動報告と2009年度活動計画(案)」、「2008年度決算報告と2009年度予算(案)」は、いずれも参加者の満場一致で採択されました。総会終了後、懇親会が行われました(「2008年度活動報告と2009年度活動計画」は別途掲載)。  
(文責:横山)
事務局短信
川著作集勉強会のご紹介

 小川政亮先生の著作集が出版されてから、2月に1回のペースで勉強会を行ってきました。理由は、本の中身の理解をより深めたいということはもちろんですが、1人で読むとおそらくくじけてしまうであろうと考えたからです。いつくじけてしまうかと心配していましたが、次回はなんと15回目になります。新しく参加してくださる方もいらっしゃいます。現在は、第1巻を読み終え、それぞれが自分の関心を持っている分野を報告するというスタイルをとっています。 
「小川先生の本は難しそう…」、「勉強会って何をしているの?」と聞かれることがあります。もちろん、本を読んできていただくことは前提ですが、中身を理解できなかったところは、みんなで教えあったり、確認しあいます。そして、小川先生が指摘された問題点が、現在ではどのように変化しているのかを話し合い、その中で自分が行う今後の研究や活動のエッセンスを吸収しようと頑張っています。実際は話が脱線してしまうことも多いですが、ここから何が得ることができるのかを模索しながら続けています。お時間ありましたらぜひご参加ください。
第15回の勉強会は下記の通りです。
日程:10月2日(金) PM6:30〜 
場所:未定(松ヶ枝福祉館が工事で使用できないため、別の会場を手配します。会場が決定次第、ご連絡しますので、村田<xctbx387@yahoo.co.jp>までお問い合わせください)。
範囲:『7巻 社会保障権と裁判』の「社会保障裁判−戦後社会保