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医療・福祉問題研究会会報
NO.94
2009.11.30
第97回研究例会のご案内
日時: 12月19日(土)15時〜17時半
会場: 金沢市松ヶ枝福祉館
テーマ: 「フィンランドの教育と福祉」
講演者: 平野優さん(小松短期大学教授)

世界最速レベルで「少子・高齢化」が進展する我国では、「保育・教育」と「医療・介護・年金」等の様々な社会問題が、マスコミで話題に上らない日はない。
 近年、これらの問題解決の処方箋を探るため「青少年の学力」・「社会福祉の充実」双方でトップレベルの国として、北欧フィンランドに熱い眼差しが注がれてきているが、この国の実態についてはあまり知られておらず、わが国との関係についても紹介されたものは少ない。(わが国でのイメージはムーミン、サンタさん、サウナ、オーロラくらい?)
 本報告では、このフィンランドの教育と福祉の現地調査(文科省科研費調査研究)に基づく最新情報を提供するとともに、今年で外交樹立90周年を迎えた日本とフィンランドの友好の足跡を振り返りながら、我国が学ぶべき点についても考察を深めたい。
特に「教育」を社会保障政策の根幹に位置づけ、小学校から大学院まで全て授業料無料として、全ての国民が自己の必要に応じて「ブラッシュ・アップ」が出来るように徹底したサポートを行う点や、これまで長い弾圧や紛争を経験してきたロシアやスウェーデンに対しては、それぞれの緊張地点に「サンタクロース村」や「ムーミン村」を設けて牧歌的・平和友好的イメージを「国際観光拠点」として設置し、世界の視線をここに集中させると同時に、国内の少数民族であるラップランド人(サミー人)やスェーデン人への人権にも配慮するなど、内政・外交両面において際立つ「スマートさ」に着目したい。

※ 当日、例会に先立ち13時から集会室にて事務局会議を開催します。
ご都合のつく方は、あわせてご参加ください。
第96回例会報告
「2009年4月に導入された新要介護認定基準は一体何だったのか?
〜利用者・介護現場および認定審査会の混乱」
石川県保険医協会事務局員 橋爪真奈美

2009年9月29日(火)、近江町交流プラザ4階研修室にて第96回定例会が開催された。今回は、「2009年4月に導入された新要介護認定基準は一体何だったのか?〜利用者・介護現場および認定審査会の混乱」と題し、城北クリニックの大川義弘院長と石川県保険医協会事務局員の橋爪(執筆者)より報告を行った。
大川先生は、介護保険制度発足当初から金沢市の介護認定審査員をつとめている。日々患者からの依頼を受け介護保険の主治医意見書を作成している医師として、また、認定審査委員として、ユーモアを交えながらさまざまな角度から要介護認定について発言いただいた。
<大川義弘先生>
要介護認定の見直しは過去3回行われており、今回(09年4月)は4回目の改定であった。これまでの見直しをひとことで言うなら「要介護認定の変更の歴史は、軽度化を意図した歴史である」と、鋭く指摘した。
2006年4月の新予防給付導入時、認知症の有無や状態の安定性によって要介護1(介護給付)と要支援2(予防給付)とに区分されるしくみがつくられた。しかし、そもそも1次判定で要支援1と判断されてしまうと認知症があってもそのまま要支援1とされてしまうケースもあり、実態と矛盾している。「介護」と「予防」との境界線が極めて曖昧で、予防給付として区分されるのは、限度額を下げるための方策といわれても仕方がないことをあらためて強調した。
また、大川先生は石川県保険医協会の理事でもあり、協会が行った「新介護認定方法を検証する調査結果」についても報告された。今回の改定が「軽度認定される傾向にあること」や「非該当と判定される確率が高いこと」などは、全国調査とも一致している。ただ、協会が集計したデータは、あきらかに前回と状態像がかわっていないと思われる更新者を抽出・分析しており、オリジナル性に溢れより実証性が高いとのことであった。
今次改定後1カ月も経たない間に取られた経過措置(要介護認定等の更新申請者が希望する場合には、従前の要介護状態区分等によるサービス利用が可能となる措置。2009年9月末日終了)によって、利用者や介護現場への混乱はかろうじて免れた。また、10月から再度見直された新要介護認定のしくみがスタートし、一件落着したかのようにも見受けられる。しかし、今回のことで「平準化」などと大義名分をいっても、本質は見抜かれており、国民の目を侮れなかったことが明確になったといえる。
依然として医療と介護保険との間に存在する整合性の無さや矛盾点は解決されておらず、残されている課題は多い。介護保険法の目的に立ち返り、目的どおりの制度設計となるよう努力していきたいと締めくくられた。
<橋爪真奈美>
 今次改定のポイントや要介護認定の歴史やしくみについては大川先生の報告のとおりであり、私からは例会で報告した感想を述べたいと思う。
 今回、例会で報告する機会を与えていただいたことで、まず「要介護認定」とは何か?をあらためて問い直すことができた。介護保険制度発足時は、そもそも人をランクづけするような「要介護認定」に違和感を覚えていたはずであったのに、時間の経過とともにいつの間にかその存在に慣れてしまっていた自分に気づいた。
介護保険には、たくさんの制限がある。例えば、介護度別に定められている区分支給限度額による給付制限。また、サービスを利用できることになっても、1割自己負担があることで経済的な負担を考え利用を抑制せざるを得ないサービス利用の制限。そして、介護保険利用の可否を決める「要介護認定」など。たくさんある制限の中で「要介護認定」は、制度利用の入口部分であり、介護保険の根幹をなすものと考える。こんな重要なことをいとも簡単に変更させてしまうことは大問題であると、報告しながらあらためて憤りを感じた。
 それでは、現行の「要介護認定」にかわるシステムはあるのか?介護保険制度そのものの存続はどうなるのか?という話しだが、「要介護認定システム」の発案者である小山秀夫さん(当時、国立医療・病院管理研究所医療経済部長)の談話を紹介して報告を終える。
「要介護認定をやめてみるという方法もある。…ヨーロッパでは、多職種によるアセスメントチームが、その人にどんなサービスが必要かを判断している国がある。チームで議論し、どんなサービスが必要かを決めて3カ月ためし、その評価を書面にして審査委員会で審査する。要介護認定もなければケアマネジャーもいない。いろいろみたけど、これがいちばんいいのでは」と。今さら…と思わなくもないが、貴重な発案かも?とも思う。

会員レポート
「第15回社会福祉研究交流集会に参加して」
フリー当事者 道見 藤治
 8月末に大阪で第15回社会福祉研究交流集会があり、私も参加させていただきました。拙い感想ですが、若干述べたいと思います。
私はこの集会にどのように臨むべきか迷っていました。いかに実践が大事か痛感していたばかりだったので、果たして研究者の集まりでどのようにエッセンスを吸収したらよいか、戸惑っていました。
 1日目の講演・報告を聴いて上記の懸念は吹き飛びました。理論武装をしなければ、とんでもないことになると気付きました。
 記念講演の神戸女学院大学の石川康宏さんのお話によると、社会保障に廻す財源は、取れるところから取って、ムダをなくせば十分確保できると判りました。また、国家予算の使い方は、政府・与党の意思決定によることに他ならないと判りました。
 とかく、社会保障の充実には財源をどこに求めるかといった議論では、それは消費税の増税でまかなうべきとの短絡的な構図はおかしいと思います。構造改革のあおりで公共事業の投資が減って景気浮揚の抑制がかかったとの見方もありますが、社会保障の充実を図った上で、国民の消費が伸びる道筋をきちっと提示すべきと思います。かつて消費税の増税により、景気が悪くなったことを検証すべきと考えます。
 特別講演の同志社大学名誉教授、小倉襄二さんのお話で憲法9条、25条を堅持しなければならないとあらためて思いました。憲法改「正」の動きは9条だけに留まらず、生存権を保障する25条にまで手を伸ばして、暮らしを圧迫することも狙っており、大変危険だと思います。また小倉さんの言われる永く生きてきたものの責任も共感できました。
 基調報告の佛教大学の加美嘉史さんからは「ほんまもんの福祉」の実現をめざしてと題して、判り易い現状の報告がありました。若い人へのメッセージもありました。
 総じて1日目の企画はお腹の膨れるものでした。
 2日目の分科会は第3分科会「障害者・家族の貧困と真の自立を問う」に参加させてもらいました。これにはいささか不全感を持たざるを得ないものでした。その理由は、逼迫した障害のある人、家族の貧困の切実な状態を議論する展開を描けなかったこと、1日目の講演・報告とのつながりがよく見えていなかったことが要因に挙げられるかと思います。
 そんな中、研究者からはいくらか問題提起がありました。助言者の立命館大学の山本耕平さんからは、実践が危機の状態に置かれていて、余裕がないこと、集団形成が困難な状況にあるとの指摘がありました。またかつて共同作業所を作る運動の歴史があったが、現状では施策そのものによって当事者と支援者が引き裂かれているとの意見がありました。問題提起として、生活がどうなっているのか事実を見よう、福祉は権利であるといったことが示されました。
 また、佛教大学の鈴木勉さんからは、政策課題として問題を受け止めよう、障害者自立支援法などについて、契約制度はメスを入れざるを得ない、対案を用意する必要があるとの問題提起がありました。
 現場実践の危機というキーワードを受けて、私から次のような発言をさせてもらいました。「しゅうけん」において、就労支援ではより具体的に機能するネットワークの構築をやりたいという機運が盛り上がっていると述べました。
 福祉の原点は運動であると全体会のまとめにもありました。折りしも政権交代がありました。福祉の舵取りを誤らずにしていくことが大切と思います。

※原文は研究会ホームページと「福祉のひろば」12月号に掲載されています。


 
事務局短信

医療・福祉問題研究会 2009年大忘年会のご案内

毎年恒例の医療・福祉問題研究会の忘年会を企画しました。年末の忙しい時期ですが、今年一年を振り返り、会員の皆様方と大いに語り合えるひと時を過ごすことができればと思います。多数の御参加をお待ちしています。

日時:12月19日(土)18時より(例会終了後 移動)
場所: 寿し榮 (金沢市武蔵町15-1 めいてつエムザ地下1階)
          TEL 076-260-2628
予算: 5000円程度

準備の都合がありますので、12月15日(火)までに、以下の連絡先へ出欠をお知らせ下さい。また、Faxご利用の方は、以下の用紙をご使用ください。
E-mail  : yyhms182@ybb.ne.jp  (河野)
    TEL・FAX : 076−252−7775  (河野)



医療・福祉問題研究会大忘年会 申し込み用紙

医療・福祉問題研究会 2009年大忘年会に

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事務局短信
シンポジウムのお知らせ

国際ハンセン病政策シンポジウム
「ハンセン病医療政策と患者の人権−日本とノルウエー」

日時:2010年1月23日(土)13:00〜17:00
場所:金沢市文化ホール大会議室
主催:金沢大学・国立ハンセン病資料館 


本シンポジウムでは、ノルウェーベルゲン市からハンセン病医療政策の
歴史研究を行っている4名を招き、 ノルウェーのハンセン病隔離政策と
患者の人権に関する議論の歴史的変遷を紹介していただく。ノルウェー
からの特別講演をふまえ、パネルディスカッションでは、日本の元患者、
法曹、医師らとの議論を通して、日本におけるハンセン病医療政策の
歴史的特徴と今後の課題を明らかにする。