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医療・福祉問題研究会会報
NO.95
2010.2.1
第98回研究例会のご案内
日時: 3月5日(金)18時半〜20時半
会場:  金沢市松ヶ枝福祉館
テーマ:『派遣村以降の生活保護行政の変化と自立支援の課題』
報告者: 福田さん、村田 隆史さん
2008年から09年の「年越し派遣村」以降、生活保護の現場は大きく変化しました。
いままで生活保護行政では保護の対象外とされていたホームレスやワーキングプアの状態にある人も生活保護を受けられるようになり、いわゆる稼動年齢層の保護受給者が激増しています。
厚労省も、要保護状態の人が保護を受けられないことがないよう「3・18通知」以降も現場の福祉事務所に保護の徹底を求めています。
しかし、依然として不況が続き、生活保護を受けている人が経済的に自立していくことは容易ではありません。自立を支援するケースワーカーも保護受給者の激増により多忙を極め、自立支援まではとても手が回らない状況です。
今回の研究例会では、以上のような現状を踏まえ、ホームレス、ワーキングプアやシングルマザーなどが自立(経済的のみならず、日常生活や社会生活の自立)するために、いま生活保護行政が何をすべきなのか皆さんで考えていきたいと思います。
みなさまのご参加をお待ちしています。
第97回例会報告
「フィンランドの教育と福祉〜日本が学ぶこと〜」
石川県保険医協会事務局員 小野栄子
12月19日、松ヶ枝福祉館で、フィンランドの教育と福祉についての現地調査の報告を平野優さんが行った。クリスマス間近、しかもテーマはフィンランドということもあり、サンタクロース姿でユーモアたっぷり、写真も多用した平野さんの報告で、熱心ながらも笑いが絶えない楽しい例会となった。
ムーミンやサンタクロース村が有名で、牧歌的なイメージのあるフィンランドだが、それは実は国家的な戦略によるものだった。東はロシア、西はスウェーデン、南はドイツとの緊張関係が長年続いてきたせいか、国防国家としても名高いという。そのような状況では、緊張地帯に軍隊を、というのが通常の考え方だろう。しかし、フィンランドはその関係を逆手に取り、緊張地帯にサンタクロース村を建設することにより、侵略されない国を作っている。フィンランドは、サンタクロースやムーミンで平和を全世界に輸出しているのだ。
「平和を輸出する」で思い出した。コスタリカも情勢不安定な中南米にあって、平和と豊かな環境を輸出する国として有名だ。ただ一点異なるのは、コスタリカには軍隊はなく、フィンランドには軍隊があるということ。戦争と福祉が両立しないように、高福祉と軍事を両方持っている点については、どうしても矛盾を感じてしまう。国家予算のパイがどのように配分されているのか、気になるところである。
「フィンランド・メソッド」でも有名なフィンランドの高い教育水準。その教育の中身は?理念は?と聞かれても答えられる人は少ないだろう。フィンランドでは、徹底して全ての生徒に平等な教育を与えることを理念としており、貧富の差や年齢でも差別しない。そして、「ひとりも落ちこぼれを出さない教育」、「その子どもにあった教育」、生涯にわたり自分の能力をブラッシュアップできるシステムになっている。その教育方法は、日本の「教師が知識を与える」といった管理教育ではなく、自分で調べ、それを発表し、議論し、まとめるという一連の学びの作業を、教師は見守り支援する。生徒の主体性を尊重し、その能力を最大限に生かす方法である。その姿勢は教室での自由な机の配置や、フィンランド人の読書量にも表れている(読書量は日本人の数十倍とも言われている)。
日本では学ぶ過程を楽しむ以前に、まず結果が求められる。理解力不足の私は、「もっとゆっくり勉強ができたらな」と思いながら育ってきた。算数の時間に、教えてもらった方式ではなく、自分で方式を見つけたときには算数ってこんなに面白いものかと感動した。今からでもフィンランドの自由で豊かな教育を受けてみたいと思った。
「落ちこぼれは一人も出さない」と言っても、現実はそう容易くいかないだろう。とは言え、高い理想を理念に掲げているのはやはり純粋に素晴らしいと思う。教育や福祉が、国の責任で行われなければならないと覚悟が伝わってくる。高福祉・高負担も、国民が政府や政治家・官僚を信頼していなければ成立しないというシステムである。私たちも、信頼できる政治家・官僚を育てなければならない。小沢さんや鳩山さんのニュースをみるにつけ、先は長いな…と溜息をつきつつも、フィンランドの教育・福祉の実態を聴いて希望も多く感じた例会であった。 

会員レポート
「2010年新年にあたって」
             道見藤治(金沢市障害者施策推進協議会委員)

 今年は「人権」あるいは「権利」を切り口に議論が深まるよう画策したいと思います。折りしも、1月15日は、金沢市プランの一環で市民フォーラムがあり、「障害のある人の権利条約とノーマライゼーション」をテーマに井上先生の講演がありました。
 更に、東京の精神保健の団体JHC板橋の情報誌「ピアメンタルヘルス」に載せるインタビューとして、井上先生に「人権」などを語ってもらいました。
 昨年からは、「しゅうけん」の取り組み、「きょうされん」石川支部立ち上げ準備会の関わりを持てたので、十分仕事があります。
今年の総会記念企画では、障害に関する新法を見据えて、シンポジウムを開催したいと思っています。任意のネットワークで議論を深めるなど、その準備は大変ですね。
ですが、今年は「頑張らない」ことをモットーにしごとをしたいです。また、遊ぶ余裕を持ちたいです。
「源氏物語」の現代語訳を読破したいです。また研究会の行事として4月29日に山菜採りハイキングを執り行ないたいと思っています。
他人より時間を余計に費やすしか能力はありませんが、多大な時間を要することもなくなったようですので、仕事に遊びにと楽しみたいです。でも今年も多忙かなあ?ついつい頑張ってしまいそう。
会員レポート
「組織の不動軸を考える」
石川県保険医協会事務局 神田順一


会員レポート
「組織の不動軸を考える」
石川県保険医協会事務局 神田順一
         
 私は2010年1月に満60歳となり、1月31日付で定年退職となる。この機会に私の勤務先(石川県保険医協会)の35年間のあゆみと県内における医療・福祉分野の市民運動との関係をふりかえってみた。
 石川県保険医協会は、開業保険医の生活と権利を守ることと、医療保障の改善の二つを目的として、1975年5月に会員数104人、事務局員1人体制で設立された。35年の歳月を経て2010年1月現在、会員数は1,030人(医科開業医の7割、歯科開業医の6割が加入)、事務局職員は6人体制となり、県内の医師・歯科医師の会員組織では石川県医師会に次ぐ大きな組織に発展している。
組織が大きくなるとそれを担う事務局体制の整備、拡充が求められるが、保険医協会の現況はどうか。
保険医協会事務所は、金沢市泉1丁目の居酒屋跡の(6畳一間)に事務機器はガリ板と謄写印刷機だけでスタートしたが、会員数の伸びと活動範囲の広がりに伴い4度移転して、現在は金沢市尾張町2丁目の生命保険会社ビル内に事務所(約55坪)を設けている。ここに保険医協会の二つの活動目標に共感した事務局職員6人が「組織の不動軸」、この組織は何のために存在しているのかを常に考えながら勤務している。
事務所にはコピー機、ファックス、簡易印刷機、紙折機、丁合機、宛名印刷機等々が揃っている。これだけのソフト・ハード両面にわたる事務局機能が揃っている医療団体には様々な分野からの要請、期待が寄せられる。
これまでその時々の要請に応えて保険医協会が事務局団体になり、発足した市民運動は以下のとおり。それぞれ役員体制と財政を確立し、現在に至っている。
◎ 保険医協会が事務局団体になっている市民団体(*印は休眠状態、敬称略)


名称 代表者 発足年月
1 老後問題を考える石川のつどい(2000年7月に国際高齢者年・石川NGOと改称) 歴代の代表世話人:小川政亮、保坂哲哉、梶井幸代 1982年11月

2 核戦争を防止する石川医師の会 歴代の代表世話人:登谷栄作、安藤良一、白崎良明 1988年1月

3 福祉マップ編集委員会(保険医協会の役職員と医療・福祉専門家で編集委員会を構成) 歴代の編集長:大野幸治、井沢宏夫、喜多徹、服部真、大川義弘監修者:横山寿一 1988年10月

4 国際高齢者年・石川NGO(*) 運営委員長:井上英夫 2000年7月

5 医療制度をよくする石川いのちを守る会(*) 歴代の会長:高松弘明、井沢宏夫 2001年11月

6 九条の会・石川医療者の会 代表:井沢宏夫 2007年5月

7 共済の今日と未来を考える石川県懇話会 代表:西田直巳 2008年11月

1986年9月に発足した医療・福祉問題研究会には歴代の役職員が総会記念シンポジウムや例会、「医療・福祉研究」誌の編集作業等に報告者や執筆者として参加、協力している。普段の例会にはめったに参加しないが、総会後の懇親会や年末の忘年会には欠かさず参加するつわもの(誰?)もいる。
この外、保険医協会事務局員が現在参画している市民運動には、石川県社会保障推進協議会、反核・平和おりづる市民のつどい実行委員会、NPT再検討会議代表派遣石川県実行委員会、グループホーム事件を考える会、自立支援を考える会等があり、医療、福祉、反核・平和、人権保障など多くの分野で情報を共有しており、このフィードバックが保険医協会の活動範囲の拡大に繋がっている。
国民とともに社会保障を守り、拡充をめざして運動する保険医協会が今後いっそう発展するよう研究会の皆さんのご支援をお願いしたい。

事務局短信
次回の世話人会
   日時:2月18日(木)午後6時30分より
   場所:松ヶ枝福祉館